廃漁具の再資源化事業を手掛けるamu株式会社がシードラウンドにて、7500万円の資金調達を実施したことを明らかにした。
今回のラウンドでの引受先は、ANRI、UBE、ANOBAKA。融資における借入先は、七十七銀行と日本政策金融公庫。
今回の資金調達により、同社が開発するナイロン素材の製造やマーケティング強化、海外展開を進める。
amuは漁業者から回収した漁網などの漁具からナイロン素材を生み出し、ナイロン素材ブランド「amuca®」として販売を予定している。素材の種類はペレットや繊維、生地など用途に合わせてオーダー可能だ。
ナイロン素材の製造に用いる漁具は、amuが漁師から有償で買い取る。主要漁港のある各地域組合や漁具問屋と提携して漁具の回収体制を整えることで、2023年5月の会社設立からこれまでに20トンのナイロン漁具を回収した。
amuca®のような再生ナイロンのニーズは近年高まっており、イタリアのAquafilが開発した再生ナイロンの「ECONYL®」は、さまざまなラグジュアリーブランドで採用されている。
2028年には日本全国で1000トンの漁網回収を目指す。漁具回収の体制を強化し、海外の展示会出展や新たな素材ブランドの立ち上げも並行して進める考えだ。
今回の資金調達に際して、代表取締役CEO 加藤 広大氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。
―― 御社が解決に取り組む課題について教えてください。
加藤氏:海洋プラスチックごみの約4割は、漁師が使う漁網などの漁具によるものです。漁具は産業廃棄物として処理する必要があり、処理するにはコストもかかります。小規模な場合でも約50万円、組合単位では年間で6000万円以上の費用がかかっていることも珍しくありません。
漁師には費用を負担して産業廃棄物として処理する以外に方法がないため、結果的に海上で投棄されてしまう漁具が少なからず存在するというのが現状です。
また、海洋投棄が増えると、投棄された漁網に海洋生物が絡まってしまうなど、海洋汚染や生態系への悪影響につながってしまいます。
―― 事業化にあたって工夫した点について教えてください。
漁具の回収や素材化は、口で語る分にはシンプルでも実現するのは大変です。特に重要なのが「分別」と「洗浄」です。海の中に投棄されているものなので汚れがひどいものもありますし、さまざまな素材が組み合わさっているためにリサイクルが難しいものも多くあります。
リサイクルに適した漁具に分別をして洗浄する。さらにそれらを破砕して素材として再利用するには、ノウハウや特別な設備も必要になってきます。破砕機は企業と共同開発することで分別コスト削減を実現するなど、以前から工夫を積み重ねてきました。
―― 創業のきっかけは?
大学在学中に、地方創生の一環として気仙沼に何度も足を運んでいました。頻繁に通っていると、地元の人から「なぜそんなにも気仙沼に通っているのか?」と何度も聞かれるんです。「たまたま訪れたのが気仙沼だったから」という理由では当時の自分は納得できず、さまざまな地域を見て回りました。
よくよく調べてみると、気仙沼は起業家がすごく多いんですよ。気仙沼は地理的な背景もあって、気仙沼の中で経済が完結しています。結果的に、基幹産業である漁業に関連した事業を手掛ける社長が多い点が非常に面白いなと。こうした場所から、世界に通用するビジネスをするのがかっこいいと思ったことが創業のきっかけの一つです。
当初は、環境問題解決というよりは、気仙沼という地域の特性を生かした商品開発に興味を持っていました。気仙沼の特性を表現する過程で、漁具を資源化して社会に流通させるというアイデアに行きついて今の事業に至りました。
―― 調達資金の使途について教えてください。
調達した資金は、商品開発や新ブランドの立ち上げに利用します。漁具に使われるプラスチックにはさまざまな種類がある中で、現在私たちが扱っているのはごく一部にすぎません。多くのプラスチックに対応することは、あらゆるステークホルダーにとってプラスになるはずです。
こうした新ブランドの開発に加えて、漁具の回収を担当する人員も補強する必要があります。また、工場の設備投資も強化することで、当社の強みである一次加工の能力を高めていきたいと思います。
―― 今後の長期的な展望を教えてください。
海外へのamuca販売をいち早く進め、あらゆる企業に我々が開発する漁具由来の素材を扱ってもらいたいと考えています。
同時に東南アジアなど、漁具のリサイクルが進んでいない地域での回収も検討しています。今後漁業が盛んになっていく中で、漁具の回収を増やすだけでなく、そもそもリサイクルしやすい漁具の利用を促進するなど、漁具がリサイクルされやすい環境作りから取り組んでいきます。
長期的には、プラスチックを持ち込めば資源化できる工場のような仕組みを作りたいと考えています。漁具に限らず、農業などの各産業で発生する廃棄物を持ち込めば他の素材に生まれ変わるイメージです。それを当社だけで実現する必要はありません。必要な技術を持っている会社と共同で、プラスチックが地産地消できるような世界観を実現できたら面白いなと思っています。
漁具のリサイクル問題はシンプルながらも、これまで解決には至りませんでした。私たちが一つひとつ解決策を見出しながら、前進していきたいと思います。
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