厚生労働省は、事業譲渡と合併に関しても通達(厚生労働省告示第318号)を出し、事業譲渡により承継する労働者から承諾を得るにあたっては、真意による承諾を得られるよう、事業譲渡に関する全体の状況(譲渡会社等及び譲受会社等の債務の履行の見込みに関する事項を含む)、承継予定労働者が勤務することになる譲受会社等の概要及び労働条件(業務内容、就業場所、その他の就業形態等を含む)等について十分に説明し、承諾に向けた協議を行うことが適当であるとしています。
また、当該協議は、承継予定労働者から真意による承諾を得るまでに十分な協議ができるよう、時間的余裕をみて行うことが適当であるとしています。加えて、承継予定労働者が転籍に同意しなかったことのみを理由とする解雇等は、解雇権の濫用として認められないとしています。
合併については、合併による権利義務の承継はいわゆる包括的承継であり、消滅会社との間の労働契約は、存続会社等に包括的に承継されるものであって、労働条件についてもそのまま維持されるものであると明記されています。
上記の施行規則及び指針の改正は、これまで実務上理解されてきたところを再確認する内容ではあるものの、今後、こうした施行規則や指針に沿わない手続きによる労働者の承継について、その効力が争われる根拠となるものであり、一層こうした手続き履践の重要性が増したといえます。
森・濱田松本法律事務所 弁護士 高谷 知佐子
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文:森・濱田松本法律事務所Client Alert 2016年9月号Vol.33より転載