M&A仲介協会は19日、東京都内で記者会見を開き、2025年1月1日から「M&A支援機関協会」に改称すると発表した。これに伴い、会員をFA(フィナンシャル・アドバイザー)、M&Aプラットフォーマーにも拡大。FAや地域金融機関、有識者などを同協会の理事、委員会・分科会の委員として招き入れ、より開かれた組織にする。不正な買い手問題をはじめとするトラブル回避と市場の信頼維持が狙い。
M&Aには仲介事業者だけでなく、FAや金融機関、公認会計士や税理士、弁護士なども関わっている。会員枠などを広げることで、より実効性があるM&A市場の健全性を高め、中小企業がより安心して事業承継できる環境づくりを目指す。
M&A支援機関協会は発足と同時に「自主規制ルール検討委員会」と「資格制度検討委員会」を立ち上げる。
自主規制では2025年1月から経営者保証が解除されない懸念がある場合に想定される結果についての説明をするなどの「M&A成立後のリスク事項に対しての説明義務の追加」や経営者保証の解除を買い手企業に義務づける条文案を契約の標準文案に盛り込む「最終契約書の草案における経営者保証の取り扱い」、買い手企業の資力の調査など売り手企業にとってリスクの有無などの調査がなければ基本業務に向けた具体的な協議を進められない「不適切な買い手事業者への対応」などを実施する。実効性や市場からの要請を受けて、自主規制ルール検討委員会で改訂を進める方針だ。
資格制度については、M&Aアドバイザーの財務、法務、税務面での業務品質とモラルの向上や、自主規制ルールの実効性向上、利益相反を防いで顧客本位のサービスを実現する高い職業意識の養成を狙う。
荒井邦彦代表理事(ストライク社長)は「資格制度の採用でアドバイザーの人数は減り、仲介事業者の業績は一時的に落ち込むかもしれない。それでも資格制度の導入により、サービスレベルが向上し、中小企業が安心してM&Aできる環境を整えて市場を活性化したい」と説明している。
文:糸永正行編集委員
厚生労働省は近く、銀行と証券会社で働く「M&Aアドバイザー」に裁量労働制を適用すべきかどうかの方針を取りまとめる。