実名公開でM&A情報を掲載! 日本公庫の新しい取り組みに注目
日本政策金融公庫は8月5日、国民生活事業の事業承継マッチング支援で「オープンネーム(実名)による後継者公募」を開始した。匿名ではなく実名でのマッチングは画期的な取り組みといえる。
日本M&Aセンターホールディングス<2127>の元常務取締役・大山敬義氏が、1億1,000万円の脱税をした疑いで東京国税局から刑事告発されました。2019年6月にM&Aセンターの常務取締役を退任後、2020年にストックオプションで同社株を取得。複数回にわたって10億円を超える差益を得ました。このうち、7億4,600万円の確定申告をせず、1億1,000万円を着服した疑いが持たれています。
資金は大山氏が経営する別のコンサルティング会社への出資金に充当されており、東京国税局は意図的に脱税していたとみています。大山氏は事実を認めたうえで修正申告し、納税を済ませました。
M&Aセンターは売上の前倒し計上による不適切な会計処理が発覚。ガバナンスの強化に努めている最中でした。脱税は大山氏個人が行ったこととはいえ、倫理観を重視した経営が求められます。この記事では以下の情報が得られます。
・M&Aセンターが行った不適切会計の内容
・不適切会計発覚後の業績の変化
大山敬義氏はM&Aセンター創業時の1991年に新卒社員として入社。同社初のM&Aコンサルタントに就任しました。事業承継を中心とした中小企業のM&A実務に精通しており、M&A仲介業界をけん引した人物として知られています。
水上温泉の旅館「源泉湯の宿 松乃井」が2006年7月に民事再生法の適用を申請した際、再生支援の仲介役となったのがM&Aセンターでした。エリアリンク<8914>が資金的な支援を行い、運営をシーガル・リゾートイノベーション(群馬県利根郡)が担うことが決定。大山氏はシーガル・リゾートイノベーションの取締役を務めています。
2012年4月にM&Aセンター常務取締役に就任しました。2018年4月にはM&Aプラットフォームを提供するアンドビズ(現:バトンズ=東京都千代田区)を設立。大山氏は2022年3月までバトンズの代表取締役を務めていました。
大山氏はM&Aセンターの成長に貢献し、企業文化の構築に多大なる影響を与えてきました。ファイナンスや税務、経営の知識にも長けており、大山氏の意図的な脱税行為はM&Aセンターにもレピュテーションリスクが及ぶことになりかねません。
M&Aセンターは不適切会計が発覚して、2022年3月に再発防止策を公表したばかりでした。
M&Aセンターが手を染めていた不正は、売上を前倒しするという古典的な手法によるもの。売上計上基準の充足要件を満たしていないにも関わらず、売上報告がなされていました。
不正は2019年3月期から始まったとされています。不適切報告に関わるM&A取引の件数自体は78件ですが、同一案件における複数回の報告がなされているため、発生件数は83件です。
■発生時期と発生件数
売上報告がなされていたにも関わらず、最終的に売上取り消しとなった案件は13件見つかっています。
■不適切報告がなされていた案件の成約状況
一連の不適切会計による影響を鑑み、M&Aセンターは2021年3月期の決算数値を見直しました。361億3,000万円としていた売上高を3.7%減の347億9,500万円。営業利益は164億800万円から6.5%減となる153億3,600万円に修正しています。営業利益率は45.4%から44.1%へと低下しました。
2022年3月期の営業利益率は40.7%、2023年3月期の業績が予想通りに着地をすると42.9%。不適切会計の発覚後、営業利益率はやや落ち込んでいるのがわかります。
日本政策金融公庫は8月5日、国民生活事業の事業承継マッチング支援で「オープンネーム(実名)による後継者公募」を開始した。匿名ではなく実名でのマッチングは画期的な取り組みといえる。