不祥事が生じにくい企業の文化・風土
オーナー企業では、トップが倫理的に正しくない行動や判断を行ったとしても、それを正すことは大変困難ですが、組織がサステナブルであるためには、やはり「トップが倫理的に正しくあること」は必要です。
ビズサプリの久保です。
能登半島地震で被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。皆さまが少しでも早く日常生活に戻れますよう、お祈り申し上げます。
さて、今回は内部監査部門の組織上の位置づけについて考えてみたいと思います。
2021年6月に公表された現行のコーポレートガバナンス・コード補充原則4-13③は次のようになっています。
「上場会社は、取締役会及び監査役会の機能発揮に向け、内部監査部門がこれらに対しても適切に直接報告を行う仕組みを構築すること等により、内部監査部門と取締役・監査役との連携を確保すべきである。」
ほとんどの上場会社の内部監査部門は社長直轄であると思います。内部監査部門が監査役会と連携するのはこれまで実施されていますが、取締役会にも報告する必要があるのはなぜでしょうか。
社長は取締役会の議長であることが多いと思います。その議長に報告しているにも関わらず取締役会にまで報告するのは、見方によっては屋上屋の感もあります。
しかしよく考えると、内部監査部門が社長の指揮命令下にあれば、社長や会社に都合の悪いことは監査しないように仕向けることができます。すなわち、内部監査部門が、組織上社長から独立していない状態であるということになります。
内部監査部門が取締役会に報告することにより、この問題に対応しようというのが、この補充原則の趣旨です。なおこの場合、監査結果だけを取締役会に報告するだけでは、問題解決にはなりませんので、監査計画や監査の実施方法なども報告することが必要になるでしょう。
内部監査部門の社長からの独立性だけが問題ではありません。そもそも多忙な社長が内部監査の日常的な指揮命令を行うことはできないことが多いと思います。
リスクアプローチ監査などの知見がある社長も少ないでしょう。
何をどのように監査するかについてのほとんどは、内部監査部門に任せているのが実態だと思います。
社長が不正に関与するかもしれないから、内部監査部門は監査役会だけでなく、取締役会にも報告すべきというのが、冒頭の補充原則の趣旨ですが、それよりも内部監査の品質問題の方が大きいと思います。
取締役会に対して内部監査報告が行われることは良いことですが、報告に至るまでの内部監査の品質管理に関してガバナンスがしっかり関与する必要があると思います。
監査役会は内部監査部門と年に何度も協議していると思います。
ただし、内部監査部門の指揮命令は社長が行うことになっているため、監査役会は内部監査に「お願い」はできたとしても「指示」はできません。
多くの監査役会は内部監査部門とは一定の距離を置いていると思います。
監査役会が内部監査部門を直轄できるかどうかについて、日本監査役協会は、その海外向け英文説明書において次のように記述しています。
「監査役会と内部監査部門等とは協力関係を持つことが期待されているが、内部監査部門等は経営者の管理下にあるため、監査役会が指揮命令することはできない(邦訳筆者)。」
内部監査部門が経営者の管理下にあることが、監査役会が直轄できない理由とされています。そうであれば、社長が内部監査について指揮命令しないこととし、人事や予算などについては社長直轄を残すということで対応することができます。
内部監査部門の人事や予算の立案は、会社の業務執行に該当するため、監査役はこれを実施できないとされています。そのため、それは社長が実施し、監査役会はそれに同意するかどうかを検討するという建付けにしてはどうでしょうか。
これにより内部監査部門は、組織上は社長に直属し、監査機能上(職務上)は監査役会が指揮命令することになります。この結果、内部監査部門の社長からの独立性が確保され、かつ監査機能の最大化を図ることができます。
日本ではこのような体制はあまり見かけませんが、英米における経営者、監査委員会及び内部監査部門は、このような関係になっているのが一般的です。
この体制で法的な観点から指摘を受けるとすると、内部監査は業務執行に該当するため、監査役が実施することができない、という点であるかもしれません。
このような指摘に対しては、取締役の職務の執行を監査することが監査役監査ですので、もし内部監査と同等のことを監査役が実施したとすれば、それは監査役監査またはその関連業務であると考えることができます。
監査役にこの体制を提案すると、監査役が内部監査まで担当するのは荷が重いという反論があるかもしれません。しかし、これまで多忙な社長が実施していたことを、監査を本業とする監査役が実施すれば、社長より上手くやれるのではないでしょうか。
会計監査人による会計監査、監査役監査及び内部監査の3つの監査は相互補完の関係にあり、これを三様監査と呼びます。この中で会計監査はガバナンスの外側からの監査ですが、監査役監査と内部監査はガバナンス内側の監査ということができます。
監査役監査と内部監査を一体として実施することにより、ガバナンス内側の監査を有効かつ効率的に実施できると思います。
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オーナー企業では、トップが倫理的に正しくない行動や判断を行ったとしても、それを正すことは大変困難ですが、組織がサステナブルであるためには、やはり「トップが倫理的に正しくあること」は必要です。