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マスコミが手のひらを返したようにジャニーズ事件を報じ始めた理由

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なぜマスコミは一斉にジャニー氏事件の報道に転じたのか?(写真はイメージ)

「アジェンダ設定」で社会の反応は一気に変わる

こうした現象を「アジェンダ設定(セッティング)」と呼ぶ。社会学者のマクスウェル・マコームズ氏とドナルド・ショー氏によって1972年に提唱された概念で、大衆や政治家の注目する議題(アジェンダ)を設定する影響力がマスコミにあるという考え方だ。

今回の事件では、BBCの番組が日本社会で「人権問題」というアジェンダを設定し、その結果として国内マスコミが一斉に取り上げることになった。これは何もマスコミだけの現象ではない。ジャニー氏の性加害問題は、ジャニーズファンの間でも「噂」として広く知られていた。

しかし、それを理由にした事務所への大規模な抗議活動や、ファンクラブからの大量退会があったわけではない。BBCによる「アジェンダ設定」以前は、ほとんどのファンにとっても「芸能界にありがちなスキャンダルの一つ」に過ぎなかったのだ。

このような「アジェンダ設定」により、一般に広く知られていたスキャンダルが社会的大事件に転換した事例は芸能界に限らない。「星の貸し借り」としてファンの間では周知の事実だった大相撲の八百長問題が、全くの別件だった野球賭博事件の捜査で押収された携帯電話のデータから発覚して一斉に報道。2011年春場所の開催が中止に追い込まれた。

企業でも、かつては当たり前のように横行していたセクシャルハラスメントやパワーハラスメントが、マスコミによる「アジェンダ設定」により社会的に厳しく批判されるようになっている。これまでは問題にならなかったことが、「アジェンダ設定」により突然にして企業を揺るがす大事件に発展しかねない状況も十分にありうる。

危機管理対策の一つとしてアンテナを高くし、「アジェンダ設定」される前に社内で起こっている問題の「火種を消す」必要があるだろう。いつまでも「そんなものだから」と大目に見てもらえるわけではない。社会の見る目は「アジェンダ設定」で一変する。一般企業にとっても、ジャニーズ事件は決して「対岸の火事」ではない。

文:M&A Online

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