静かな日曜夜の電車が一転、阿鼻叫喚(あびきょうかん)の地獄絵図となった。午後8時頃に京王線国領駅(東京都調布市)構内の電車内で20代の男性容疑者が刃物を振りまわして車内で放火。17人が負傷し、うち60代の男性1人が意識不明の重体となった。この事件でクローズアップされたのが「安全設備」のはずだったホームドアのリスクだ。
現場の様子を伝えるツイッター投稿動画によると、事件が起きた車両がホームドア位置からずれた場所で停車。車両ドア、ホームドアともに開かなかったため、乗客らは車両内を逃げ惑い、複数の乗客が車両の窓からホームへ命からがら逃げ出す様子が映し出されていた。
これはホームドアが設置されていたがゆえの出来事だ。ホームドアが設置されていなければ、乗客は非常用ドアコックを操作してホームへ逃げ出すことができたはず。もちろん運転士がホームの所定位置に停止できれば問題はなかった。
が、事件を受けた本来の停車駅ではない国領駅での緊急停止であり、正しい位置に停車できなかったことは仕方ない。それでも乗客たちは刃物を振り回す犯人が歩き回り放火までされた車内で、ドアが開かず閉じ込められたことに激しい恐怖を感じたはずだ。
放火の炎が車両全体に燃え広がった場合、ドアが閉じたままの状態では多数の死傷者を出しかねない。1951年に横浜市で発生した国鉄桜木町事故では車両のドアが開かず、乗客が炎上する車両に閉じ込められて死者106人、負傷者92人を出す大惨事となった。
ホームドアはホームからの転落事故を防ぐための安全対策として、都市部を中心に配置が進んでいる。しかし、今回のような犯罪や火災時には、逆に被害を大きくする可能性が出てきた。ホームドアの「安全神話」を見直す必要もありそうだ。
ホームドアに関わる株式銘柄は以下の通り。東鉄工業<1835>、神戸製鋼所<5406>、ナブテスコ<6268>、高見沢サイバネティックス<6424>、日立製作所<6501>、三菱電機<6503>、日本信号<6741>、京三製作所<6742>、川崎重工業<7012>
文:M&A Online編集部
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