ご注意ください
この記事は公開から1年以上経っています。掲載されている情報は、公開当時のものです。

実務者必見!「こっそり学ぶPPA(取得原価の配分)」第3回 実務で留意すべき点とは

alt

3.想定外のケース

 評価の対象となるのは、あくまでも買収時点に存在する無形資産になりますので、PPAを実施した結果、無形資産が計上されないケースもあり得ます。

 例えば、ある企業の顧客資産を獲得したようなケースでは、無形資産として計上され得るものは、買収時点において存在する顧客であって、買収時以降に買収企業による経営施策等によって新たに増加すると予想される顧客ではありません。

 被買収企業の顧客の入替り率が高い場合、買収時点に存在する顧客が生み出す価値が短期間で減少するため、当該無形資産の価値を測定してみると買収企業が想定したよりも価値が小さくなるケースがあります。

 また、ベンチャーを買収するような場合によくみられますが、買収時点において赤字の企業を将来の成長期待やシナジー効果を見込んだプレミアム込みの価格で買収するようなケースでは、当該顧客が生み出す経済的価値が「0(ゼロ)」と評価されてしまい、無形資産が計上されず、買収価額と純資産の差額が全額のれんとなるケースもあります。

4.税効果によるのれん増加

 PPAの結果、無形資産を計上する場合、会計上の繰延税金負債が計上されます。このとき計上される繰延税金負債の金額分、相手勘定であるのれんが増加する点に留意が必要です。

5.まとめ

 以上のように、PPAにはいくつもの留意すべき点があり、買収企業においては十分に準備を整えた上で手続を行う必要があります。

 買収の主な目的と想定されたものが、無形資産として計上されないケースもあり得ることから、特に買収時における適時開示の内容と、有価証券報告書等での開示内容の整合性等には買収前の段階から注意を払うことが必要と考えられます。

 また、一連のPPAの手続は買収企業が入手する情報やデータに基づいて行われることから、デューデリジェンスの段階でPPAの実施を見据えて必要な情報を入手・整理しておくことも肝要です。

 さらに、のれんの償却期間等、監査上の論点となり得る項目について、監査人との間で早めに意見交換を行っておくこともPPAをスムーズに進める上で有用と考えられます。

【留意すべきポイント】
・買収時における適時開示の内容と、有価証券報告書等での開示内容の整合性等には買収前の段階から注意を払うこと
デューデリジェンスの段階でPPAの実施を見据えて必要な情報を入手・整理しておくこと
・監査人との間で早めに意見交換を行っておくこと

以上

[文]株式会社Stand by C 取締役/公認会計士・税理士 大和田 寛行

株式会社Stand by C

2010年1月に創業。極めて高度な専門性を持つプロフェッショナル集団としてM&Aに関わる会計・税務を中心としたアドバイザリーサービスを提供し、数々のクライアントのM&Aに関する意思決定をサポート。財務・税務デューデリジェンス、株式価値算定、PPA無形資産価値評価等のサービスにおいて国内有数の実績を有する。

詳しくはこちらから http://standbyc.com/


NEXT STORY

実務者必見!「こっそり学ぶPPA(取得原価の配分)」第2回 無形資産の評価

実務者必見!「こっそり学ぶPPA(取得原価の配分)」第2回 無形資産の評価

2016/08/26

M&Aに必須のPPA(Purchase Price Allocation)について、実務経験が豊富な会計士が留意すべき点について解説します。