「暫定的な」会計処理とは?

評価作業が完了するまでに決算期末を迎えると、まだ数値が確定していないという状況が発生します。そこで、企業結合会計基準では、その時点で入手可能な合理的な情報にもとづいて暫定的な会計処理を行い、後に追加的な情報が入手できた時点で数値を確定させる方法が認められています。ただし、その期間は企業結合日から1年以内とされます。

例えば、有価証券報告書における開示では、企業結合日が属する年度で暫定的な会計処理を行い、翌年度に処理が確定した際には、比較情報として掲載される前年度の財務諸表を見直し後の数値に置き換えるという方法がとられます。また、それぞれの年度で暫定的な会計処理について必要な注記を行います。

M&Aスキームによる違いは?

吸収合併の場合、被合併会社(消滅会社)の資産や負債は合併会社(存続会社)の決算書に取り込まれます。その際、時価で評価された資産や負債の純額より取得対価の方が高い場合には「のれん」が計上されます。

現金を対価とした株式取得の場合、買い手企業(親会社)の単体の決算書には対象会社(子会社)の資産や負債が取り込まれる訳ではないので、取得対価は単に「子会社株式」などの科目で計上されます。

ただし、連結決算書を作成する際には、時価で評価された子会社の資産や負債を合算した上で、親会社が保有する「子会社株式」と子会社の純資産(資産と負債の差額に相当)を相殺消去します。つまり、取得対価に相当する「子会社株式」が子会社の時価純資産額より高ければ「のれん」が計上されることになります。

このように、吸収合併でも現金を対価とした株式取得の場合でも「のれん」が関係してきます。そのため、いったん暫定的な会計処理を行い、後の年度で数値を確定させた場合には、評価を見直した資産や負債だけでなく、「のれん」とその償却額も調整するという作業が求められます。

以前、「アーンアウト条項のついたM&Aとは?」しっかり学ぶM&A 基礎講座(25)(記事はこちら)で紹介させていただいた処理とともに「のれん」の修正を伴う処理として整理することもできるでしょう。

文:北川ワタル