中国共産党が7月に第20期中央委員会第3回全体会議(3中全会)を開く。昨年秋とされていた同会議の開催が大幅に遅れ、中国の内政は不確実性を増している。経済や安全保障の不透明感が高まる中で、日本企業は中国企業のM&Aを含む投資にどう向き合えばいいのか。元駐中国大使で日本アジア共同体文化協力機構理事長の宮本雄二氏は「中国に投資すべきかどうかは、その企業の競争力による」と見る。日本記者クラブ(東京都千代田区)の会見で、M&A Onlineの質問に答えた。
日本企業の中国市場からの撤退が相次いでいることについて、「中国市場は世界で最も競争が激しい市場だ。1990年代から2000年代にかけての『中国に進出さえすれば、どんな会社でも儲かった』時代は過ぎた。中国からの相次ぐ撤退は(地政学的リスクではなく)、市場競争についていけない負け組企業が退場しているだけだ。競争力を維持している勝ち組企業は対中投資を続けている」と指摘した。
さらに「中国市場は巨大で、リターンも大きい。かつて地方政府が地元企業保護のために外国企業の進出を妨害する動きもあったが、最近は中央政府がそうした外資排除を許さない姿勢を示している。競争力がある企業は積極的に投資すべきだろう。新たな業種では、飲食店チェーンなどのサービス業で日本企業の競争力が非常に高く、中国進出が加速している」と、新たなビジネスの中国展開に期待する。
中国経済のデカップリング(経済分断)については「2008年以降に中国で国粋主義的な世論が盛り上がり、政府もそちらの方向へ世論誘導するなど西側諸国とのデカップリングとも見える動きもあった。しかし、中国政府の上層部は自国経済が世界経済に100%組み込まれていることを明確に理解している」と、完全な分断には至らないとの見方を示した。
会見で宮本氏は日中関係について「低迷する経済力とは裏腹に国際政治上の日本の重みは増しており、中国も日本との関係改善を望んでいる。実務レベルでの日中対話は一時より進んできた。ただ、領土問題や歴史認識で衝突が起こると関係は悪化する。政府は対中基本戦略をしっかり固め、政治・外交や経済、文化、民間交流を含めた包括的な視点で動くべきだ」と提言している。
宮本氏は2006年から10年まで駐中国大使を務めた。
文・写真:糸永正行編集委員
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