米国で人類初の核兵器開発プロジェクト「マンハッタン計画」を主導したロバート・オッペンハイマー博士の孫で、ベンチャー投資家でもあるチャールズ・オッペンハイマー氏が来日した。映画「オッペンハイマー」が日本でも公開され、科学者の倫理について注目が高まっている。
チャールズ氏は「今日、最先端技術の開発に取り組んでいるスタートアップも例外ではない」と警鐘を鳴らす。日本記者クラブ(東京都千代田区)で、M&A Onlineの質問に答えた。
チャールズ氏は「かつて人類の運命を左右する科学開発は国家プロジェクトだったが、現在は民間のスタートアップ企業が大きな役割を果たすようになった」と指摘。とりわけ「AI(人工知能)の急速な進化は、人類にとって脅威になるかもしれない」と見ている。
「マンハッタン計画に参加した科学者たちは、原爆を危険性を知った上で開発に関わった。だから戦後に祖父をはじめ多くの関係者が核兵器反対運動に身を投じたのだ。しかし、AIの開発者たちが自らの技術の危険性を十分に認識しているかどうかは疑問だ」と警鐘を鳴らしている。
とはいえ「科学技術は人類の幸福に寄与するもので、AIに危険性があるからと言って開発を止めてしまっては本質的な問題解決にならない」と、単純な「反科学主義」を否定した。
「(科学技術から恩恵や影響を受ける)社会のあらゆる人たちと開発者との交流を通じて、技術の社会実装や使い方を決めていくべきだ」と、最先端技術の開発に当たるスタートアップに社会との対話による企業倫理の確立を求めている。
チャールズ・オッペンハイマー氏は1975年生まれ。米オレゴン大学で国際関係学を学び、シリコンバレーでのソフトウェア開発やハイテク企業への投資などを手がけている。2019年に「Oppenheimer Project」 、2023年に「 Oppenheimer Energy Ventures」を創設。核拡散と気候変動の脅威に対して、核分裂テクノロジーによる問題解決を目指す社会活動を展開している。
文・写真:糸永正行編集委員
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