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首都圏廃線物語 かつて西武鉄道が所有した休止線、廃線を訪ねて

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東京都水道局小河内線―わずか5年の命

西武安比奈線と同じように、敗戦後、日本の近代化に歩調を合わせていた路線が「東京都水道局小河内線」—— 俗にいう水根貨物線である。JR青梅線の終点奥多摩駅から奥多摩湖畔までの約6.7キロの路線。山裾を縫うような急カーブ、それぞれ二十数本ものトンネルやさまざまなタイプの橋梁が連続している。

この路線は、正式名称に「水道局」とあるように、小河内ダム建設のための資材運搬のために建設されたものだ。戦争の激化によりに中断していたダム建設は敗戦後に本格化し、それとともに1950(昭和25)年に小河内線も着工、2年で完成させている。そして、5年後のダムの完成とともに廃止された。ただ、正確にはこの路線も「廃線」ではなく「休止線」である。

紅葉の時期には絶景を望めそう

 ほんの5年間の命とはいえ、本格的な路線であり、橋梁やトンネルなどの施設は今日なおびくともしないような頑丈なものだ。そのまま整備しさえすれば、

すぐにも運行を再開できるような、たたずまいである。

ダム建設の役目を終えたのち、一時期は西武鉄道に譲渡されていた。観光路線として運行のもくろみもあったようだが、実現には至っていない。現在は奥多摩駅近くに工場のある、石灰の採掘・販売を行なう奥多摩工業の所有となり、最低限の管理が行なわれている。

紅葉の時期には、一帯の山々が赤く黄色く色づく。それら木々の息吹をいっぱいに浴びられる、開放感のあるトロッコ列車を走らせれば、奥多摩観光の新しい目玉として注目されよう。紅葉とトロッコ列車といえば、京都の嵯峨野の観光鉄道が有名で、約20分間の「もみじ狩り」を楽しめる。同鉄道は関西の名物となっているが、ここ小河内線もそれに負けていない。ましてや、多摩川の渓流と奥多摩湖、小河内ダムといった観光アイテムが揃っているだけに、首都圏の人々がこぞって訪れるだろう。

シーズン中の休日には、おしゃれなジョイフルトレインを都心から奥多摩を経由してダムまで走らせてもよい。それほどに、景色のよいところである。ひところまでは青梅〜奥多摩間に限って通勤電車を間に合わせのように改造した展望型電車が走っていたのだが、現在は、定期列車としては通勤電車をそのまま転用したホリデー快速を休日に走らせているに過ぎない。

どうも、妄想が広がってしまったようだ。渓谷と山間を走る、東京都水道局小河内線——。廃線(休止線)のまま朽ち果てさせるのはもったいないほどの路線である。「再開線」とならないだろうか。

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