「アトツギベンチャー思考 社長になるまでにやっておく55のこと」|編集部おすすめの1冊

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数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Onlineがおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。

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「アトツギベンチャー思考」社長になるまでにやっておく55のこと 山野千枝著 日経BP刊

会社の跡継ぎ(アトツギ)に向けて書かれた事業承継の本である。先代の仕事をそのまま受け継ぐのではなく、アトツギの力で既存事業にイノベーションを起こそうと提案するのが本書の特徴だ。新規事業の立ち上げのみならず、既存の組織、サプライチェーン、プロセス、マーケット、プロダクトへと影響を与えて変革を起こすために、55の視点から記した一冊となっている。

著者は、大阪産業創造館で長年、中小企業やベンチャー企業の支援に携わってきた山野千枝氏。同機関が運営するビジネス情報誌「Bplatz」の編集長として多数の経営者へ取材も敢行。そうした多様な経験から「アトツギが日本を支えている」ことに気づき、アトツギに特化した新規事業開発支援として、一般社団法人ベンチャー型事業承継を立ち上げたのだという。

アトツギベンチャー思考

本書で興味深いのは、アトツギが孤独な存在として記されていることだ。アトツギとして入社したものの、立場上はただの社員。しかし、未来の社長候補であることから、社内の誰にも悩みを相談しにくい、孤独な存在として描かれる。そんななかでも、周囲からの期待に応えようと奮闘するアトツギの姿が描かれる。

そうした孤独なアトツギ目線から、「ベンチャー型事業承継」の達成方法が紹介されていく。家業の歴史をたどり、今ある家に目を向けて、そこから家業とは何かを定義して、今まさに求められているニーズをくみ取り、そこから新たな価値を生み出していこうというのだ。

そうした過程で紹介されるノウハウ自体に目新しさはない。だが、エモーショナルな対立を生み出しやすい先代との関係性、社内における微妙なアトツギの立場など踏まえたうえで記される方法論や提言は、読み手に熟読・熟慮すべきと思わせるだけの力がある。(2023年10月発売)

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