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「復刻版 日本列島改造論」|編集部おすすめの1冊

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数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Onlineがおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。

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復刻版 日本列島改造論」 田中角栄著、日刊工業新聞社刊 

著者の田中角栄(1918~1993)は1972年7月、首相に就任した。時に54歳。戦後最年少で宰相に上り詰めた。“今太閤”、“コンピューター付きブルドーザー”などと呼ばれ、その生い立ちや抜きんでた実行力とあいまって、国民的な喝采を浴びた。

田中内閣が誕生するひと月前に世に出たのが「日本列島改造論」。当時、田中は通産相(現経産相)の要職にあったが、次期首相に直結する自民党総裁選への出馬を控え、自らの政権構想を記したのだ。政権発足によって増刷に次ぐ増刷を重ね、政治家の著作として異例の91万部を記録する大ベストセラーとなった。そんな歴史的な一冊が復刻版として半世紀ぶりによみがえった。

「復刻版 日本列島改造論」の書影

過密と過疎を同時に解決するー。「日本列島改造論」はこのフレーズに集約される。戦後の高度経済成長の下で、人口や産業の都市集中と地方の過疎化が一段と進み、公害問題なども深刻化していた。産業の再配置や列島各地を結ぶ高速道路・新幹線、情報ネットワークの整備によって人とモノの流れを変え、国土の均衡ある発展を目指すことを提言した。

日本が西ドイツ(現ドイツ)を抜き、米国に次ぐ世界2位の経済大国に進したのは1968年。1970年にはアジアで最初の万国博覧会が大阪で開かれ、日本中が高揚感に包まれた。だが、驚異的な経済成長の陰でひずみが増大していた。

大都市と地方の格差解消、待ったなしの環境問題、デジタル化の進展…。本書発刊から半世紀を経ても、日本が向き合う課題の多くが共通することに今更ながら驚かされる。

東京一極集中の是正が今日なおテーマとなっていることを考えれば、過密と過疎を同時解決するという田中の問題意識から学ぶべきことが多々ある。

例えば、本書で50年も前から日本を「情報列島」にする必要性を説いている点。有線テレビ、テレビ電話、職場や家庭でボタン一つでコンピューターを呼び出すことのできるデータ通信など、インターネット時代を予測したような記述に目を見張る。情報列島化の実現で、地方にいながらにして商売や勉強ができるようになると強調する。

出版翌年の1973年秋に第1次石油危機を起き、列島改造ブームに後退する不運に見舞われた。田中自身も金脈問題で政権を追われ、首相在任は2年5カ月にとどまった。さらにロッキード事件の被告人になり、政界の表舞台から退場した。

田中は本書のむすびで「明治百年の日本を築いた私たちのエネルギーは、地方に生まれた、都市に生まれた違いはあったにせよ、ともに愛すべき、誇るべき郷里のなかに不滅の源泉があったと思う」としたうえで、列島改造への思いをこう続ける。

「失われ、破壊され、衰退しつつある日本人の“郷里”を全国的に再建し、私たちの社会に落ち着きとうるおいを取り戻すためである」と。(2023年3月発売)

文:M&A Online

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