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小説「王の家」|編集部おすすめの1冊

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数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Onlineがおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。

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「王の家」 江上剛著、光文社刊

創業者の父親と、後継者である娘による権力争いの末に、大手家電量販店に吸収合併された、あの家具販売会社の混乱の状況を思い起こす読者は少なくないだろう。

そこに、王位を退く際に、甘くて心地よい言葉で取り入った長女と次女に領地を与え、素っ気ない発言に終始した三女を怒りに任せて追放してしまう、シェイクスピアの「リア王」の悲劇が重なる。

宝田壮一は日本一の家具店である宝田家具を一代で築き上げた人物だ。父が戦死し、母も空襲でなくし、わずか6歳で天蓋孤独となった。25歳で宝田家具を設立し必死で働き、家具王といわれるまでになった。その壮一も83歳と年老いたことから、経営の一線から退くことを決意したものの、いずれも宝田家具の役員である3人の娘の誰に経営を任せるのが良いのか悩んでいた。

「王の家」

長女は壮一の後を継ぎ、社長になることを望んでいた。次女は、長女が社長になると自分が宝田家具から追い出されるのではないかと恐れており、三女は父親が気がかりなだけで、宝田家具の社長になることなどは全く望んでいなかった。

この三姉妹の思いに、次女の夫の策略が加わり、さらに投資ファンドや銀行の思惑が絡まり合い、後継者選びは難航する。

壮一とともに宝田家具を長年支えてきた老役員の提案で実施した、後継者を決める試問会で、まさにリア王のごとく、長女と次女がうまく立ち回り、言葉数少なく正直な気持ちを語った三女は壮一の怒りを買い、追い出されてしまった。

長女は試問会の発言とは裏腹に、壮一が大事にしてきた高品質の「百年家具」を無用の長物と切り捨て、安くてセンスのいい家具にカジを切るべきだとの考えを持つ。次女は追い出されるくらいなら自身が社長になろうと画策する。三女は宝田家具の発展のために社長に就任してほしいとの周囲の期待にどう応えれば良いのか悩み続ける。

骨肉の争いの結末はいかに。(2023年5月発売)

文:M&A Online

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