数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Onlineがおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。
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「社長交代」 事業承継の光と闇 佐藤明郎著 幻冬舎刊
ある調査によると、世界で最も100年企業が多いのは日本で約3.3万社あるという。第2位の米国(約1.9万社)を大きく引き離し、断トツの1位だ。さらに世界で最も古い企業も日本にある。大阪にある金剛組で創業が578年であるから社歴はなんと1445年になる。
我が国は世界的にみて寿命もさることながら、社歴も長寿国であるらしい。そうであれば、事業承継はお手の物のはず。しかしご存じのとおり、中小企業の事業承継問題は(進んでいるものの)依然として解消までには至っていない。
なぜこれほどまでに事業承継が進まないのだろうか。その難しさの一端を知りたい方におすすめするのが本書である。サブタイトルにもある「事業承継の光と闇」を経験した著者が記した数々のエピソードは、親族間承継の難しさを臨場感をもってわかりやすく伝えている。
著者は2007年に負債総額7億円で実父から会社を受け継いだ2代目社長。いざ承継してみたものの、創業者である先代と比較され、古参の社員には軽んじられ、事業の先行きも不透明で経営は不安定。ついには父との裁判沙汰にまで発展する。
先代の立場と承継する者の立場。見方を変えるとまた違った感想になるだろう。本書で紹介されている日本商工会議所のアンケート調査によると、事業承継予定の企業の7割以上が親子間承継だという。
小難しいスキームやテクニックは一切書いていないが、逆に商売臭さを感じずに違和感なく読み進めることができる。
親子とは不思議な関係であるとつくづく思う。事業承継を控える経営者に読んでほしい1冊である。(2023年8月発売)
事業承継や相続の本質は、会社を継がせる人(オーナー社長)継ぐ人(後継者)、継がない人 (非後継者)の間の「価値観のギャップをどのように埋めていくのか」にある。本書はこんな思いを込め書かれた。