【こっそり学ぶ】街角経済学「物価」について
街角経済学では、我々の生活に身近な物価とは何か、そして物価が上がることは、皆さんの生活にとって良いことなのか(悪いことなのか)を改めて考えてみたいと思います。
このように、我々の税金の一部(国家予算の歳出の割合で言うと3割)は社会保障給付に使われており、また、個人と事業主を合わせて78兆円の保険料を納付している訳ですから、もっと社会保障に関する政策に興味を持つべきだと思います。
極論を言えば、国の財政の収入は税金と社会保険料しかない訳で、現状は毎年の収入より支出が多い状況であり、不足分は国債という借金で賄われ、積み上がった1,100兆円近い借金の返済原資としては、社会保険料は社会保障給付にしか使われない以上、将来の我々の税金で返済するしかない事実を、もっと重く受け止めるべきでしょう。
国の収入が税と社会保険料ですから、財政を正常化するには、支出を減らすか、収入源である税金か社会保険料を増やすしかありません。
2022年度の税収は、過去最高の71兆円を超えたとのニュースがありました。物価高で消費税が伸びているようで、所得税を上回り(所得税が22.5兆円に対して消費税は23兆円なのでほぼ同規模)、最大税目となっています。所得税・法人税は過去に引き下げた経緯はあるものの、所得税の増税は富裕層、法人税はそこからの増税は大企業の反発で上げにくく、広く薄く徴収出来る消費税や社会保険料率の引上げが行われてきました。
その結果、財務省が公表している国民負担率(国税・地方税と社会保障負担の合計を国民所得で割ったもの)は、2023年度で46.8%とのことです。これは、1970年の24.3%からほぼ2倍の負担となっていることが分かります。
特に、税負担は18.9%から28.1%と約9ポイントの増加に対して、社会保障は5.4%から18.7%と約13ポイント増加し、税以上に負担が増加していることが分かります。今年度は134兆円の社会保障給付は、約20年後の2040年度には190兆円と、さらに4割増えるという試算もあり、そうなると、単純に国民負担も4割増えることになります。
政府は先月16日、経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)を閣議決定しました。賃上げや少子化対策、防衛力強化等、重要課題に対する施策について、財源確保については曖昧だという意見もあります。中でも、少子化対策については、「こども未来戦略方針」を掲げ、その加速化のため、「こども家庭庁の下に、こども・子育て支援のための新たな特別会計(いわゆる「こども金庫」)を創設し、既存の(特別会計)事業11を統合しつつ、こども・子育て政策の全体像と費用負担の見える化を進める。」とあります。
加速化のための予算規模は3兆円程度とのことですが、財源は歳出改革と、不足する場合は特例国債を発行するということで、確実な財源が確保出来ているとは言えない状況です。ましてや、特別会計は既得権益の温床とも揶揄され、財務省のチェックが甘くなりがちで、国の予算と言えば一般会計が話題の中心で、特別会計は国民の関心が低いということもあります。
かつて塩川正十郎元財務大臣は、特別会計のことを、「母屋(一般会計)ではおかゆを食ってけちけち節約しているのに、離れ座敷(特別会計)で子供がすき焼きを食っておる」、と評したそうです。
財政支出は削減どころか、毎年増え続けており、最近は防衛費の増額や、落ち着きましたがコロナでの補正予算もあり、コロナ初年度の補正予算では、70兆円を超える財源が充てられています。
国の収入の大半が税収と社会保険料であることを鑑みると、新たなこども金庫に限らず、一般会計と特別会計を含めた全体の財政収支をベースに全体の方向性を議論してもらいたいものです。そうしないと、木を見て森を見ずになってしまい、日本の将来の施策を誤った方向に導かないとも限りません。
文:花房 幸範(株式会社ビズサプリ パートナー 公認会計士)
株式会社ビズサプリ メルマガバックナンバー(vol.176 2023.7.5)より転載
街角経済学では、我々の生活に身近な物価とは何か、そして物価が上がることは、皆さんの生活にとって良いことなのか(悪いことなのか)を改めて考えてみたいと思います。