DSPの多くは個人事業主に配送を委託しているという。分かりやすく言えば同じアマゾンの荷物を運ぶ個人事業主でも、フレックスではアマゾンと直接契約する「一次下請け事業者」、DSPでは「二次下請け事業者」となる。「1次下請け」のフレックスの方が良さそうにも思えるが、常に仕事があるか分からないというデメリットも。一方、DSPとの契約は安定して受注できるのがメリットだ。
料金の安さや配送に手間がかかるなどの理由で大手配送業者との取引が細っているアマゾンジャパンが、中小配送業者や個人事業主に依存せざるを得ないとの事情もある。しかし、「2024年問題」で配送従事者が極端に減少するのは確実な情勢。ここで柔軟な運用が可能な個人事業主をアマゾンジャパンに流出させることで、国内大手配送会社の活動に制約がかかるリスクも無視できない。
大手配送業者は収益性の高い配送サービスに「選択と集中」を進めている。これは、かつて国内大手製造業が辿(たど)った道だ。当初は利益率が上がり「V字回復」ともてはやされたが、長期的に見れば縮小均衡を招き、ものづくりの国際競争力は低下してしまった。
アマゾンジャパンがDSPに出資する可能性もあり、大がかりな買収攻勢をかけて「ラストワンマイル」の戸別配送ルートを押さえる可能性もある。そうなれば国内大手配送業者がアマゾンジャパンの「言い値」で配送を委託せざるを得ないという、現在とはあべこべの未来もあり得る。「選択と集中」を誤れば、企業の命運はたちまち傾く。これまでも多くの日本企業が「選択と集中」の落とし穴にはまったことを忘れてはいけない。
文:M&A Online
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