●大量保有報告書とは?

上場企業の株式等を5%を超えて保有した場合に、その証券会社や投資会社は5営業日以内に大量保有報告書という書類を提出します。これは金融商品取引法に基づいて提出する書類で、通称5%ルールとも言われます。

また、大量保有報告書を提出したあと1%以上の保有比率の変動があった場合は変更報告書を提出します。これら大量保有報告書や変更報告書はEDINETで一般に公開され、誰でも閲覧することができます。

EDINET http://disclosure.edinet-fsa.go.jp/

大口の売買動向が分かる貴重な資料ですが、投資会社に勤めていたりしない限り目にする機会はないかもしれません。そこでまずは、大量保有報告書には何が書いてあり、どんなふうに使えるのかを見ていきましょう。


●最低限チェックしておきたい大量保有報告書のポイント

重要な書類とは分かっていても、少し内容が堅苦しく、分量もけっこうあります。
そこで特に注意してみておくべきポイントをまとめてみました。

株券等保有割合

書類を提出した大量保有者が、どれくらい株式を所有しているのかが分かります。大量保有報告書の場合はどの程度まで株式を買い進めたのか、変更報告書の場合は買い増しか売却かがチェックポイントになります。

当該株券等の発行者の発行する株券等に関する最近60日間の取得又は処分の状況

株券等保有割合のすぐ下に、直近の株式売買の情報が記載されています。ここには取引日時や数量だけでなく市場での売買か市場外の相対取引なのかも記載されていますので、例えば市場で少しずつ買い増しした結果5%を超えているなら、ここしばらくの株価もその影響を受けていると推測できます。

保有目的

どういう目的で株式を保有しているのかが記載されます。「安定株主としての保有」や「株式交換による株式の交付」などであれば株価への影響は少ないと見ることができます。一方、「純投資」や「提案行為」などであれば更に売買が続く可能性も高く、変更報告書の提出動向をチェックしていきたいところです。

●企業側が見るべきポイント

最近、ソレキア株式会社に対する富士通株式会社と佐々木ベジ氏のTOB合戦が話題になっています。ソレキアは富士通によるTOBには賛成していますので、佐々木氏による買収攻勢に対して以前よりソレキアと関係の深い富士通が助け舟を出している(ホワイトナイト)という形です。

上場企業であれば、自社の株式を誰がどれくらい売買しているのか、本格的に買収を考えている会社はあるのかが気になります。特に敵対的買収を突然仕掛けられる可能性はどの企業にもあり、その兆候をつかむことは上場企業にとっては重大事です。水面下で買い進める手法を取られると、気づいたときにはかなりの株式を握られている可能性もあります。

今回のTOB合戦は佐々木氏がソレキアに対する「公開買付届出書」を2017年2月3日に関東財務局長宛に提出したことで始まりました。しかしながら大量保有報告書DBを見ると、フリージア・マクロス社が2016年からソレキア株式を買い始めています。フリージア・マクロス社は佐々木氏が束ねるグループ会社の一員です。大量保有報告書には早い段階でTOBの兆候が出始めていたのです。

(2017年4月10日時点の「大量保有報告書DB」を検索)

敵対的買収の兆候としては、株価や出来高の突然の乱高下、大きな市場外取引、株主名簿の閲覧請求やそれに関する株主や取引先などからの照会などがあります。とはいえ日々推移する株主を全て追いかけることはできませんし、株主名簿では情報更新がそこまで頻繁に出来ません。

また、大きなファンドが複数のアカウントを経由して保有していると合計の保有割合は簡単にはわかりません。実際、上場企業の株式管理を担当者の中には、株主名簿にも記載のない投資会社が自社の株式を大量に持っているという大量保有報告書を提出し、びっくりした経験を持つ人もいるかもしれません。

ソレキアのケースは、大量保有報告書に目を光らせておくことで敵対的買収の兆候を掴める好例と言えるでしょう。

早く保有者を把握すれば早く対応を取ることもできます。グループで株式を保有する共同保有の場合でもそれらを合算した大量保有報告書が提出されますので、実質的な保有者や保有比率を把握することができます。敵対的買収のリスクに向き合っていくためには大量保有報告書は必須の情報源と言えるでしょう。

また、大量保有報告書は上場企業であれば一般に公表されていますから、同業他社を取り巻くM&A状況が見えてくることもあります。自社や業界を取り巻く外部環境を理解する上でも大量保有報告書は活用したいところです。次回(個人投資家が見るべきポイント)に続く

まとめ

・大量保有報告書は、EDINETで一般に公開されており誰でも見れる
・企業側は敵対的買収の兆候がつかめる

文:M&A Online編集部

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