押さえておきたい大量保有報告書の”特例報告制度”とは
株式を誰が(どの会社が)、どれだけ保有しているかを知ることができる「大量保有報告書」。第2回目は、保有割合の計算方法や定義、機関投資家に設けられている「特例報告制度」について解説します。
株式を誰が(どの会社が)、どれだけ保有しているかを知ることができる「大量保有報告書」。前回(記事はこちら)は保有割合の計算方法や報告義務が発生する対象範囲、そして特例報告制度について解説しました。第3回は、提出のタイミングや、提出しなかった場合の罰則について解説します。
保有者が大量保有報告書、変更報告書をHTMLで作成し、EDINETサーバに登録することで提出となります。このEDINETへの提出は2007年4月から法人・個人を問わず、義務化されています。
HTML作成などできない!という方もご安心ください。EDINETでは必要事項を入力すると簡単に報告書用のHTMLに変換してくれるExcelファイルが提供されています。
法令上では内閣総理大臣に報告書を提出した後、証券取引所、発行会社に遅滞なく写しを送付するというルールがありますが、EDINETに提出すれば、自動的に写しを送付したものとみなされる仕組みになっています。
なお、株券等の大量保有状況の開示に関する内閣府令(第22条の3)によると、株券等の保有者はあらかじめ発行会社に対し、EDINETの登録で写しとして良いかということを書面などで了解をもらう必要があります。
保有割合が5%を超えた時に大量保有報告書を、それ以後1%以上変動した時や報告書に記載すべき重要事項に変更があった時に変更報告書を提出する義務があります。この日時を提出義務日といい、通常は売買の約定日になります。遺産相続による入手では相続分与が確定した時になります。
なお、1日の売買を通じて、瞬間的に保有割合が5%を超えたり、1%以上変動したりすることもあり得ますが、あくまで当日の終了時点で前日の終了時点との比較において考えれば良いことになっています。
大量保有報告書、変更報告書とも提出義務が生じた日(約定日)から5営業日以内です。(この営業日は証券取引所の営業日と一致しています)
たとえば、提出義務日が月曜日だとすると、直近で祝日のない場合には、翌週の月曜日が提出期限となります。
大量保有報告書・変更報告書を提出した後で間違いに気づいたり、重要な事実の記載が不十分だったりした場合は、訂正報告書をEDINETに提出します。書類の不備が発覚した場合は、金融庁が提出者に訂正報告書の提出を命じることもあります。
訂正報告書には様式が特に定められていませんが、「訂正前」と「後」が分かる形式での記載が求められています。
なお、EDINETへ一旦報告書を提出すると取り下げることができません。単なるうっかりミスでも訂正報告書を提出することになります。間違って様式の雛型のまま白紙で提出してしまい、訂正報告書として本来の報告書を提出したケースも、過去には確認されています。
金融商品取引法により、以下の罰則規定が設けられています。
大量保有報告書等の不提出や虚偽の記載があった場合、
・5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金またはその併科 (金商法第197条の2)
法人に対しては
・当該法人に対し、5億円以下の罰金刑の両罰規定(金商法第207条2号)
となります。
大量保有報告書の形式不備や虚偽記載があった場合、内閣総理大臣は訂正報告書の提出を命じることができます。これを違反した場合、
・1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金またはその併科(金商法第200条12号)
法人に対しては
・当該法人に対し、1億円以下の罰金刑の両罰規定(金商法第207条5号)
となります。
以上、全3回にわたり大量保有報告書の“報告義務”に焦点を当てて詳しく解説してみました。自分が株式を大量に保有する側の観点に立ってみると、より大量保有報告書制度に関する理解が深まると思います。
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文:M&A Online編集部
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