負債として計上される意味は?

これらの費用や損失は債務性があるものであり、合併後の企業にとって負担となるものですから、会計上も負債として認識されることは自然な処理に思えます。しかしながら、合併時に負債として認識すると、決算書上はあらためて費用や損失として計上されることはありません。仮に、合併時に負債として認識しなかった場合には合併後に費用または損失として計上されることになりますので、損益への影響という点では差異が生じます。

この点に関しては、企業結合に関する会計基準第99項で「むしろ、その費用又は損失を負債として認識した方がその後の投資原価の回収計算を適切に行い得る」というように言及されています。M&Aにおける投資原価とも考えられる合併の対価に費用や損失がすでに反映されていることをより重視した考え方といえそうです。

「企業結合に係る特定勘定」の注記が必要

上述のように「企業結合に係る特定勘定」は将来の費用または損失でありながら損益計算書には計上されず、ダイレクトに合併時の負債として認識されるものです。ともすれば、投資家など財務諸表の読者に見過ごされてしまいそうな科目ですが、その内容と金額については注記が求められています。それにより内容や金額のインパクトについて一定の情報提供がなされているといえるでしょう。

あまり馴染みのない勘定科目かもしれませんが、M&Aに関わる勘定科目として気に留めていただければよいのではないでしょうか。

文:北川ワタル(公認会計士・税理士)