グローバルタックスプランニング、という考え方があります。国際化している企業においては、税金も数あるコストのうちの1つであり、コストであるからにはその削減努力をする必要があるので、戦略的に低税率国で利益を多く出す仕組みとすることで、全体としての税金費用を抑える考え方です。売り上げ増大や、人件費や設備の償却費を削減するのと違い、税金負担率を1%でも削減できると、最終利益に与えるインパクトは絶大です。
税金は必ず払わなければならないものですが、それを受け身で捉えるのではなく、オペレーションその他を総合的に勘案した上で税金費用を最適化できるように税金もマネジメントしていくのですが、日本企業はおそらく欧米の企業に比べて、税金はマネジメントするものだという意識が乏しいのではないでしょうか。
ただしむやみやたらに高税率国で赤字とし、低税率国で莫大な利益を計上するようなトランザクションの流れにしてしまうと、移転価格等の妥当性で問題化するケースも出てきます。近年だとスターバックスがイギリスで税金をほとんど納めていないとか、アップルやグーグルもアイルランドやオランダを経由した複雑なスキームを使って節税していることが知れ渡り、社会問題化したのは記憶に新しいところです。これについてはOECDが中心となり、BEPSプロジェクト(多国籍企業が国際的な税制の隙間や抜け穴を利用した租税回避によって税負担を軽減している問題への対策)によって、国際課税ルールの見直しが進められています。
日本の税制もそうですが、制度と企業行動は常にいたちごっこで、何かやりすぎた事例が出てくると、それを防ぐ対策が繰り返されているので、節税の手法は時代によっても変わり得るものです。重要なのは、小手先のスキームではなく、取引の実態の伴った合理的な仕組みを構築できるかどうかだと思います。