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【TSR情報】2016年を振り返って

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不適切会計とコンプライアンス違反の倒産

2016年の上場企業の「不適切会計」は1-11月累計で54社を数え、これまで最多だった2015年(52社)をすでに上回り、過去最多の記録を塗り替えている。

2015年5月に東芝の不適切会計が発覚し、企業監査に対する信頼性や企業ガバナンス強化への取り組みを求める声が高まった。金融庁や東京証券取引所は上場企業が守るべき行動規範を策定し、2015年6月に「コーポレートガバナンス・コード」を公表した。この結果、監査法人の厳格な監査に加え、企業側も社内監査の強化を進めて不適切会計が炙り出された。だが、企業は業績達成に向けて役員・従業員とも必達目標を設定され、強まるプレッシャーが不適切会計を促した側面も否めない。

子会社の不適切会計が発覚した精密機械メーカーの「調査報告書」は、期間的偏りのない「売上平準化」を経営方針とし、目標達成のために子会社の社長は認識しながらも売上計上の前倒しを黙認したと記載している。不適切会計はコンプライアンス意識の不徹底で起こる。意識改革の過渡期での多発とも言えそうだ。

一方、中小企業でもコンプライアンス違反は経営に大きなインパクトを与える。コンプライアンス違反から倒産に至るケースも少なくない。2016年1-11月のコンプライアンス違反倒産は165件(前年同期181件)で、「行政処分を受けた」、「社長が逮捕」、「食中毒事件」などを要因とする倒産は前年の66件から67件に増加した。また、「税金滞納など」も50件から54件に増えている。

10月24日に東京地裁から破産開始決決定を受けた藤崎金属(株)(TSR企業コード:291048676、法人番号:6010601015167、東京都墨田区、負債17億7,415万円)は、先代社長の急逝後に粉飾決算が発覚し、粉飾を公表して是正方針を打ち出しながら資金調達が困難となり行き詰まった。中小企業は技術力や付加価値を見出せない場合、コンプライアンス違反が一発レッドカードになると認識すべきだろう。