企業倒産は低水準で推移しているが、ブームが一気に弾けた業界で倒産が増えた。
「太陽光関連事業者」の倒産は、2016年1-11月累計で55件に達し、これまで年間最多だった2015年の54件をすでに上回った。スタート直後は参入企業が相次ぎ、「太陽光バブル」とも言われた。だが、政府が段階的に再生可能エネルギーの買い取り価格を引き下げ、安易な参入組の淘汰が一気に進んだ。
また、「老人福祉・介護事業」関連も倒産が急増した。経営体力に乏しい小規模事業者を中心にした倒産が相次ぎ、1-9月ではすでに77件を数え2015年の76件を上回り、2016年は最終的には100件近くまで増えそうだ。高齢化社会の到来を迎え、有望市場とも期待が膨らんだが、2015年4月の介護報酬の改定で局面が変わった。介護職員の処遇改善、中重度の要介護者や認知症高齢者向けの報酬が加算され、小規模デイサービスや訪問介護事業、特養特別養護老人ホームへの報酬は引き下げられた。労働需給の逼迫も追い打ちをかけ、介護職員の人手不足が慢性化している。景気拡大で窮地に追い込まれる皮肉な事態となった。
また、出版不況も色濃く反映した年でもあった。出版取次大手の(株)太洋社(TSR企業コード:290893208、法人番号:9010001049176、東京都千代田区)が業績低迷に陥り、2月に自主廃業を表明した。影響は全国の書店に広がり、資金的な問題で帳合(仕入)変更が難しかった書店が次々と閉店に追い込まれた。太洋社と蜜月関係にあった(株)S企画(旧商号:(株)芳林堂書店、TSR企業コード:291041370、法人番号:9013301011177、豊島区)が2月に破産し、多額の不良債権が発生した太洋社も自主廃業から一転、3月に破産した。
さらに、11月には「本の聖地」神田神保町で「岩波ブックセンター」を経営していた(有)信山社(企業コード:022430504、法人番号:8010002031530、千代田区)が破産した。電子書籍やインターネット通販など、流通の多様化でリアル書店の販売は落ち込み2016年は3年ぶりに書店の倒産が増加へ転じた。
アパレル関連の倒産も目立った。2016年1-11月の「チャイナリスク」関連倒産(103件)のうち、半数近い51件が繊維・衣服等卸売業などアパレル関連だった。コスト高が経営を圧迫するケースが多かった。アパレル業界では製造と卸売、小売の境界線が曖昧で、経済産業省がまとめた「アパレル・サプライチェーン研究会」は流通が多様化する中で、アパレル業界の古い商慣行の改善を指摘している。