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主婦から社長へ、創業50年「三田電子ケイサン株式会社」の物語

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三田電子ケイサンの原田諭貴子社長

三田電子ケイサン株式会社は人材派遣を中心とした人材サービスが主な事業の会社です。創業当時はデータ入力を専門とした会社でしたが、時代のニーズに合わせ、現在の業態になりました。

現在は創業50周年を迎えますが、人材派遣サービスを始めてから、35年以上経つとのことです。利用者は9割が女性で、女性に特化した人材派遣を強みにしています。

今回はそんな三田電子ケイサン株式会社の社長、原田諭貴子(ゆきこ)さんに事業承継に関するお話を伺いました。

「きめ細かいトータルサポート」が三田電子ケイサンの強み

一口に人材派遣会社といっても今や人材派遣会社はたくさんあります。「一般社団法人 日本人材派遣協会」の調査によると人材派遣の会社は2018年で38,128か所の事業所があるとのことです。それだけ人材派遣会社があるなかで、三田電子ケイサン株式会社にはどんな強みがあるのでしょうか?

原田さん「弊社の強みはなんといっても、きめ細かく丁寧なサービスが提供できていることです。現在、在籍している社員には派遣スタッフ経験者が多くいます。

そのため派遣スタッフの立場としても、弊社の営業としての立場としてもサービスを提供できるのが弊社の強みです。両方の立場からアプローチできるので、求職者の立場に共感しやすく、クライアント様にもきめ細かい対応ができます。

大手では営業担当やコーディネータ担当が分担されていますが、弊社は分担制ではありません。分担制の欠点としては複数人で対応しているため情報の食い違いが起きることです。弊社では1人の社員が、1人の求職者の求人を探してコーディネートもします。

1人の求職者に対して1人の社員が一貫したサポートをするので、求職者は安心してサポートが受けられるのが好評です。また1人で担当するからこそ、1人1人の求職者に対して、思いを持って仕事に取り組みやすいのです」

このように「派遣スタッフ経験者だからこその立場」「大手では実現できないトータルサポート」を会社の強みとして挙げていました。

事業を継いだ夫からのSOSで事業承継を受けることになる

父親が亡くなってからは、原田さんは子育てに注力していたこともあり、母親と夫が事業を継ぎます。しかし、段々と会社の業績が落ち込んでいき、経営状況が一向に良くなりませんでした。

そして母親が高齢で働きにくくなり、夫1人に任せるのは大変だと思った原田さんは、子育てが落ち着いてきたタイミングもあって事業を継ぐことにしました。

原田さん「落ち着いてたきたとはいえ、当時家事や育児と仕事を両立させることは大変でした。社長を本格的に始めた時、下の子が中学生になるタイミングだったので、毎朝5時前に起きてお弁当を作っていました。

家事育児の他にはPTA活動にも取り組んでいたので、平日は仕事をして、PTAの活動は土日に集中して行っていました。PTA活動の中で何度か”長”のつく役職も経験し、今思えばこの経験も社長業をやる後押しになったのではないでしょうか」

家事育児と社長業の両立はハードであったものの、原田さんは『私がやるしかない』『やるからには楽しんで、業績も絶対回復させてやる』と意気込んで引き継ぎをスタートしたといいます。

夫と役割分担をすることで事業を軌道に乗せる

原田さん「経営状況が悪化している原因は、事業を引き継いだ夫が営業が苦手なところでした。また母親は父親のサポートが中心で経営感覚が身についていなかったことも原因かと思います。大手の人材会社ならばCMなどの広告などが使えるので、営業しなくても売上が上がるかもしれません。ただ中小企業は同じことはできません。営業の強化こそが一番の課題でした」

夫は決められたことをしっかり遂行する仕事が得意な人で営業が苦手。逆に原田様は大手電子メーカーでの営業の経験があったり、父親の営業に同行していたりしたこともあるので営業が大好きだったそうです。

原田さん「夫とは逆に私は営業が大好き。承継した後は至るところにひたすら営業活動をしました。新聞やネットの求人をリストアップして、ひたすら電話と訪問。また過去のお客にもアプローチをしました。おかげさまで現在は先代の水準まで売上の数字が戻りました。

夫は今は会社の管理部門として、派遣スタッフの給与・保険関係の管理、契約書やコンプライアンスのチェックなど重要な役割を果たしてくれています。適材適所にハマってお互い上手くサポートできてると思います」

適材適所にサポートできているとありますが、夫婦だからこそ難しい関係形成もあるようです。

原田さん「夫婦だから互いに甘えてしまうこともある。ただ経営では別の話。経営のやりかたを巡って対立をすることもしょっちゅうあります。特に営業側の私と管理側の夫だと価値観が違うということも対立の原因になりますね。対立した際には一度距離を取って、また徐々に距離を詰める。そんな感じで事業を続けています」

先代と次世代の線引きは重要

原田さん「次世代との線引きの仕方も重要だと思います。時代も違ってそれぞれにやり方も違うと思うので、先代のやり方を100%真似る必要はない。そのため「ここは次世代が決める」「ここは先代の考え方を継承する」といった線引きが必要だと思います。予め決めておかないと、後で経営の方針を巡って揉めてしまうと感じます。」

「これまでの事業の何を活かすのか?」「何を改革するのか?」を整理しておく必要があると、原田さんは仰っていました。また原田さんは経営のやり方や、新規事業の始め方をもっと聞いておきたかったとも仰っていました。

原田さん「父親が亡くなってしまったので、経営のやり方や新規事業の始め方などを聞く人がいなくて困りました。そのため本を読んだり、セミナーに参加したり、コンサルティングを受けたりで対応しました」

女性が社会で活躍できる姿を次世代に伝えていく

承継して社長になって良かったことについてもお聞きしました。

原田さん「子供達や次世代の働く女性に『女性でも頑張ればやっていける』という背中を見せられるのが社長になって良かったことです。経営者は自分達の利益や自社の利益を追い求めるだけでなく社会全体の利益を考えることも必要。経営者になって社会全体として考える視点が身に着いたと感じています。

うちの会社でいうと、社会全体で女性がどのように活躍できるのか?そのためにうちの会社で何ができるのか?そういった課題をどうやって克服するのかについて日々勉強しています」

かつて専業主婦になりたかった原田さんは、自分が経営者になることで、女性が社会でどうやって活躍できるかの課題に向かって奮闘しています。先代の背中を見ていた原田さんは、今では次世代の働く女性が見る心強い背中になっていると感じさせてくれました。

そんな原田さんですが今年の秋に本を出版するようです。本の内容は「母親が子育てで身についた能力は仕事にも活かせる」というもの。

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原田さん「子育てをしていると『マネジメント力』や『交渉力』や『共感力』や『コミュニケーション力』や『忍耐力』といったスキルが嫌でも身に着く。そしてこれらのスキルは仕事でも活かせるということを言いたくて本を出版することを決めました」

本の内容にも、今後の原田さんの動向にも期待です。

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