川上善兵衛は1868年、越後高田の大地主・川上家の長男として生まれた。幼名は「芳太郎」。代々、川上家では当主が「善兵衛」を継いでいて、岩の原葡萄園の創業者である川上善兵衛は6代目にあたるという。
その善兵衛が岩の原葡萄園を創業したのは、二十歳そこそこの1890年のこと。当時、越後高田では豪雪に悩まされながら米づくりに苦慮する農家が多く、善兵衛は明治期の殖産興業の理念に突き動かされ、「郷土で米に代わる産品を」と高い志を抱いたようだ。
当時の逸話がある。川上家と親交のあった勝海舟のもとを善兵衛が訪問したときのこと...