じり貧経営に招かれた“奇跡の善兵衛”

ぶどう畑の見晴らし台から高田平野を望む

着実に市場を固め、成長してきたサントリーのワイン事業。かたや、その関連会社としての株式会社岩の原葡萄園の経営はどうだったのだろうのか。

岩の原葡萄園は戦後の混乱期を乗り越え、独自の流通ルートでワインを販売し、1976年には特約店を設けて本格的に流通網をつくっていった。しかし、経営的には順調とはいえるものではなかったようだ。特に1990年代には、かなり厳しい状況に立たされた。赤字、不良在庫、借入金の利子負担、人材難……と、多くの中小企業が直面する苦境で、改善の糸口がなかなか見出せない状態だったといわれる。

その苦境を乗り越え、岩の原葡萄園は1999年度に新潟県経営品質賞の奨励賞を受賞する。ワインづくりではなく、その経営改革が評価されたのである。

サントリーのグループ会社である岩の原葡萄園の社長は、基本的に親会社の出身者。1996年に、サントリーはワイナリー工場長を長年勤めた堀内久義氏を社長として送り込んだ。堀内氏は岩の原葡萄園の創業者である川上善兵衛にあやかり、みずからを「堀内善兵衛」と名乗った。そして、社員との対話を重視し、社員一人ひとりが川上善兵衛のように企業家精神と誇りを持つことを求めたという。

具体的には、方針管理の導入や社長による現場診断の定期実施、上司面談の徹底、ショップ担当者のプロフェッショナル教育、工程ごとの品質基準の策定、管理項目の明確化やデータ公開の徹底、通信販売の顧客の組織化のほか東京や遠方での取扱小売店の組織化などを断行した。

その経営改革が奏功して赤字体質から脱却し、また、新規開発商品もヒットした。そして、無農薬・有機栽培、各工程における廃棄物削減など「Ecoワイナリー」化を推進した(受賞の経緯は新潟県経営品質協議会および関連のホームページをもとに作成)。