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回復するユーロ圏経済

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Ira Kalish

Deloitte Touche Tomatsu
チーフエコノミスト

経済問題とビジネス戦略に関するデロイトのリーダーの1人。グローバル経済をテーマに企業や貿易団体への講演も多数行っている。これまで47の国々を訪問したKalish氏の解説は、ウォール・ストリート・ジャーナル、エコノミスト、フィナンシャル・タイムズなどからも広く引用されている。ジョンズ・ホプキンス大学国際経済学博士号取得。

好調な第2四半期の実質GDP

ユーロ圏の経済は力強さを欠くものの、昨年の不況に近い状態からは明らかに回復しつつあることが、7月末に発表された2024年第2四半期のGDPからいえそうです。欧州連合(EU)の発表によると、第2四半期におけるユーロ圏20カ国の実質GDPは第1四半期比で0.3%増加と、前期と同じ伸びを示し、前年同期比では0.6%の増加となりました。なお、2023年の第3、第4四半期における実質GDPは前期比で横ばいでした。

ユーロ圏の第2四半期における実質GDPは、ドイツの第2四半期の実質GDPが第1四半期と比べて0.1%減少したために伸び悩みました。これで過去3四半期のうち2期において、ドイツの実質GDPが減少したことになります。ドイツ政府は、この成長の弱さは企業の設備投資や建設投資の減少が原因であるとの見解を示しています。同国の投資は、高いエネルギーコスト、中国での需要の低下、国内需要の低迷、中国やアメリカとの競争の激化など複数の要因によって打撃を受けている状況にあります。

一方、ユーロ圏の他の国々の経済は順調です。スペインでは、第2四半期の実質GDPが第1四半期対比0.8%増加しました。これは、今年の第1四半期の0.8%増、昨年の第4四半期の0.7%増に続く成長であり、スペイン経済は好調であるといえるでしょう。同国政府の発表によると、消費支出(0.3%増)、投資(0.9%増)、輸出(1.2%増)を含むGDPの全ての主要構成要素で大幅な増加がみられたほか、同国の失業率は2008年以降の最低水準となっています。一方で電気料金の低下が主因となって同国のインフレは減速しており、これが消費支出の増加を後押ししたと考えられています。

その他のユーロ圏諸国では、成長は概ね緩やかでした。フランスの第2四半期の実質GDPは第1四半期比で0.3%増、イタリアでは0.2%増となりました。予想を上回るフランスの成長は、主に輸出増に起因するものですが、同国の現在の政治情勢が景況感を悪化させ、結果として投資に悪影響を及ぼすことが考えられます。

今後のECBの動向に注目が集まる

投資家は9月の欧州中央銀行(ECB)の動向に注目しています。多くの市場参加者はECBが引き続き利下げをすると予測しており、公表された最新のGDPは金融政策の判断に大きな影響を与えないと考えています。全体としては、スペイン経済の好調さがドイツ経済の低迷を相殺し、ユーロ圏のGDPは緩やかな拡大となっています。インフレ動向に関する明るい兆しを示す最近のデータも踏まえると、ECBが利下げに踏み切る環境が整ったともいえますが、今後の金融政策の行方はインフレの減速がどの程度続くかに依存するでしょう。

※本記事と原文に差異が発生した場合には原文を優先します。

Deloitte Global Economist Networkについて

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