もう1つ、リストラという苦境に立たされたとき、立ち直れないほどの大きな落ち込みを回避するために、「自分はいつでも転職できる」という自信を持っておくことは大いに役に立つだろう。とはいっても、そのような自信を持つにはどのようにすればいいのだろうか。
弓代表は転職に必要なスキルを、「トランスファラブルスキル」と「テクニカルスキル」の2つに分けて説明する。テクニカルスキルは、英語や資格といった従来から言われてきたスキルのことだ。一方のトランスファラブルスキルとは、コミュニケーション能力やマネジメント能力といった、どこにでも転用可能なスキルのことで、最近とくに重要視されているという。
そして、このトランスファラブルスキルといわれるコミュニケーションやマネジメント能力の身につけ方について、「日々の仕事を通じて獲得していくことが望ましいです。また、周囲にいる、これらの能力に優れている人をモデリング(模倣)することが獲得への近道ではないでしょうか」とアドバイスする。一方、テクニカルスキルももちろん無駄になるわけではないと続ける。
「資格など目に見えるものがあれば、自信につながります。難関資格でなくてもいいので、自分なりの取得目標を決めて、それを達成すること自体に意義があると思います」(弓代表)。
そして、M&Aなどで変化に直面した人々に対し、仕事観と人生観を家族と共有し、自分自身への信頼を持つことで、周囲の変化に対して前向きに捉えてほしいと、次のように願いを語った。
「私たちキャリアコンサルタントは、1人ひとりの可能性を信じています。たとえリストラとなったとしても、これまでやってきたことは無駄だった、自分はダメな人間なんだと思わずに、ほんの1%でもプラスの気持ちでスタートしてほしいです」(弓代表)。
以上、本記事では、M&Aで従業員が直面する可能性のある、転職判断、社内抗争、リストラへの処方箋を取り上げてきた。
これらは、日頃の心がけが大事であるとともに、M&Aが起こった際でなくても、役に立ちそうだ。一会社員としても絶え間ない変化にさらされている現代、自身の明るいキャリアと会社生活のために参考としていただければ幸いである。
取材・文:M&A Online編集部
前回までの記事(バックナンバー)
【キャリア危機への処方箋(1)】M&Aで社内は大混乱。賢いビジネスパーソンは転職すべき?
【キャリア危機への処方箋(2)】「正論で反論」は逆効果。社内抗争をうまく切り抜けるには?