2008年、プロ向け市場制度として東京証券取引所にTOKYO PRO Market(TPM)という新市場が生まれた。それから10年強の間に、いくつもの個性的な企業が上場を果たしてきた。栃木県上三川町に本社を構える筑波精工<6596>の上場は2018年11月。世界に唯一の静電チャック技術で、社会貢献と会社の成長をめざす。

半導体生産設備の設計・販売からの転身

筑波精工の創業は1985年6月。現在は静電吸着システム(静電チャック)の開発・製造・販売を営むが、創業から20年ほどの2004年までは半導体生産設備の設計・販売を営んでいた。だが、2002年から半導体設備販売事業を縮小し、東京大学大学院樋口俊郎研究室の「静電界形成技術」を同研究室の学生であった傅寶莱(ポー・フォライ)氏(現筑波精工社長)が学び、その技術を軸に新事業を始めた。

新事業では、2003年からLCD(液晶ディスプレー)生産用静電「Stag」の量産ラインにつながった。そして、顧客は日本をはじめ、台湾、中国、韓国など東アジア各国に広がっていった。その過程で2008年に「栃木県Frontier企業」の認定も受けた。

2010年にはOLED(有機発光ダイオード)生産向け静電、真空環境下での蒸着用静電などの応用商品を発売した。2013年にはCarrier型静電界吸着製品「Supporte」を発売した。現在の主力商品である。

通常、モノ同士を接着させるには接着剤を使ったり、磁石の+極と−極を生かしたりする方法がある。このほかに、物質間に静電界をつくり接着させる方法がある。同社の「Supporter」はこうした静電界における吸着技術が生かされている。

主な用途は半導体の基板材料であるシリコンウエハー。「Supporter」内に蓄電した電界のみで、無外部給電の状態のままほぼ永久的に吸着する。しかも50μm(マイクロメートル、1μmは1000分の1ミリメートル)の薄さのウエハーに対応する。

師匠の研究を門下生が生かす

そのプロセスは、まず吸着面の表面に静電界を集中させ、電極を最適化することで吸着面の界面方向の電界が強くなり、その電界が強い保磁力を誘起する。その誘起した電界を閉じ込む技術が、同社が開発した世界オンリーワンの技術である。

静電界を用いた吸着保持技術は、前述した東大大学院樋口研究室の長年にわたる研究開発によって生まれた成果。それを門下生の傳社長が製品開発に応用したことになる。樋口教授は現在、同社の大株主の1人であり、社外取締役でもある。

半導体ウエハーの世界で従来できなかったことができるようになった。その実用化による半導体製品開発へのメリットは大きい。現在、半導体ウエハーはより薄型化が進んでいるが、厚さ100μm以下の半導体ウエハーにおいて、歩留まりの向上が実現する技術を持った製品は同社だけという。

さらに、生産コストの低減のためには薄型の半導体ウエハーを大口径で生産することが求められるが、口径12インチ、厚さ50μmの薄型半導体ウエハーを吸着させ、歩留まりを確保できる。