2008年、プロ向け市場制度として東京証券取引所にTOKYO PRO Marketという新市場が生まれ、この間、いくつもの個性的な企業が上場を果たした。2019年9月にTOKYO PRO Marketに上場した Kips(キプス)は同社自らそうした個性的な企業を全国から発掘し、投資・育成する会社だ。

Kipsの本社は東京駅前の新丸の内ビルディングにある「EGG Japan」にある。「EGG Japan」は三菱地所が運営する事業成長の拠点で、ベンチャーコミュニティーの東京21cクラブのほかに、国内外の多くのスタートアップ、成長企業、ベンチャーキャピタルなど入居している。

「事業創出大賞経済産業大臣賞」の支援部門で最優秀賞を受賞

Kipsは2006年1月にインディペンデンツとして創業した。社長は日本合同ファイナンス(現ジャフコ)から独立した國本行彦氏。役員にはベンチャーキャピタル出身者などが名を連ねた。

2008年12月に任意組織のインディペンデンツクラブというベンチャーコミュニティを発足する。同クラブ主催の事業計画発表会の運営のほか、自治体や企業のベンチャー支援に関するイベントの運営受託を手がけた。メディア事業として月刊情報誌「THE IDEPENDENTS」を発行した。

Kipsに社名変更したのは2015年8月。2016年1月にはインディペンデンツクラブをNPO法人に衣替え。2018年10月には「第13回ニッポン新事業創出大賞経済産業大臣賞」の支援部門で最優秀賞を受賞した。

Kipsは従来、ベンチャーファイナンスについて自己資金で行っていたが、2018年12月以降、ファンドを設立して取り組んでいくことになる。

手始めはThe Independents Angel投資事業有限責任組合というファンド。ファンド設立と同時に有限責任事業組合KipsパートナーズというGP(General Partner)を立ち上げた。出資総額は4億4000万円で、Kipsが約半額を出資。そのほか中小企業基盤整備機構機構やエンジェル投資家、金融機関が出資した。

投資対象は全国の独立系ベンチャー企業だ。大きな額のファンドとはいえないので、創業初期段階のベンチャーに小刻みに投資していくことを心掛けた。上場前の2019年6月までの約半年間で8社に投資。現在は十数社に投資している。IPO(新規株式公開)の実績としてはラクス、トビラシステムズなどがある。

今後もベンチャーファイナンス部門としてベンチャー企業の資本政策に関する助言を行い、ベンチャー企業への投資や投資事業組合の組成とその運営管理に力を入れる。「全国の個性あふれる起業家を発掘し、1人でも多くの人と一緒に1社でも多くの公開会社を育てること」を目標としている。

年50回を超える事業説明会を開催、EXITの多様化を促進する

同社の強みは、ベンチャーキャピタル人脈やインデペンデンツクラブとの連携を生かした全国各地のベンチャー企業の発掘力にある。ベンチャー、スタートアップというと、東京のIT系の独立起業に注目が行きがちだが、地方でも個性あふれる会社は数多い。丹念に発掘することを目指す。その一環として全国で年間50回以上、事業計画発表会を開き、累計発表企業数は1000社を超える。

売上高は上場前の2018年12月期には5629万円から、2019年12月期は1億1643万円に。経常利益は2018年12月期が1602万円の赤字、2019年12月期も51万円の赤字だった。

今後、ベンチャーファイナンス部門では投資後のEXIT(出口、投資資金の回収)の多様化を促進するとともに、資金調達力を強化する。同社自身も上場したTOKYO PRO Marketの活用推進も視野に入れている。

また、ウエートが低下していたイベント・メディア部門の再活性化も課題だ。全国の自治体や公的機関との連携イベントを開くほか、ウェブ・動画活用による事業拡充を目指す。

文:M&A Online編集部