無形資産評価の実務では、いわゆるCAPMに基づき被買収企業におけるWACCが設定され、被買収企業の運転資本、固定資産、のれん等の資産に対する収益率の加重平均であるWARAが当該WACCに一致するように設定されます。
これは、企業が資本投下を行う際に、少なくとも調達資本コストであるWACCを上回る収益率を期待するであろうとの考えによるものです。
さらに、設定されたWACCが合理的な水準かどうかについて、IRRとの乖離がないことを事後的に確認します。
このとき、IRRは買収金額と買収検討時に買収企業が使用した事業計画に基づいて設定されますが、前述の通り、買収企業の固有のシナジーを除外して計算されます。
無形資産の評価に、絶対的な正解はありません。PPAの対象となる買収案件の目的、被買収企業の事業の特性等を理解するとともに、入手可能な情報やデータを参照しながら、無形資産の評価における種々の前提条件を合理的なロジックに基づき設定し、最も妥当と考えられる算定結果を導くことが求められます。
本日はここまでです。次回は、PPAの実務で留意すべき点についてお話します。
[文]株式会社Stand by C 取締役/公認会計士・税理士 大和田 寛行