知人への譲渡であったが、当事者同士の交渉は避け、
専門家のサポートを受けスピード成約を実現

お相手はどのような方ですか?

尾立氏:経営者には、それなりの自覚と能力が必要です。私には息子がおり、会社に入れて学ぶ機会を与えましたが、残念ながら彼に経営を任せる気にはなりませんでした。

 医薬に関する知識、人間性、経営者としての能力などを考えたとき、会社を任せられるのは同業他社の社長であるA氏しかいなかった。十年来の気心知れた仲であり、一緒に経営の話をしてきた人物です。

 幸いなことにA氏も私の会社を譲り受けることに賛同してくれました。ただ、双方が合意しているとはいえ大きな契約ですから、当事者同士で進めるのではなく、客観的立場の専門家として四国銀行の安岡さんに入ってもらうことにしたのです。

かなりのスピード成約になりましたね。

安岡氏:尾立氏からご相談をいただいたのは2013年10月初旬で、「年内にはまとめてほしい」とのご要望をいただきました。しかし、その際に尾立氏にも説明しましたが、M&Aは大きな金額が動きますし、後日のトラブル防止のために、財務状況や取引先との契約など確認すべきことがたくさんあります。

 もちろん価格交渉も1回でOKということにはなりません。年内の成約はハードルが高いため、どうすべきか悩みました。そこでM&Aの専門家に協力を依頼することにしたのです。

 そこからは一気に加速しました。専門家に初めて同行してもらったのが13年11月14日で、最終契約したのが12月16日。専門家や高松営業所の担当者にもかなり注力していただき、初期面談から1カ月間で成約まで至ることができました。

成約後のことを教えてください。

尾立氏:最終契約がほぼ決まっていた12月7日に全従業員を集めて恒例の忘年会を開催しました。そしてその最後のあいさつで、会社を譲渡し、私と息子が第一線から退く旨を伝えました。あっけにとられていた者もいましたが、従業員の給料や勤務地などが変わらないことなどを説明すると、動揺はあったものの、大きな混乱はありませんでした。

 その後、私は妻の看病がありましたので、会社にとどまらずに退職。妻は数カ月後に亡くなりましたが、最後まで妻に付き添うことができました。

 買い手企業や四国銀行を始め、懇意にしていた医薬品卸の会社や病院関係者の皆さんなど、M&Aに関わってくれた方々のご理解のたまものと思い、心から感謝しています。

本日はありがとうございました。

お話し:有限会社あさひ薬局 前代表取締役 尾立忠志 氏
及び四国銀行お客様サポート部 ソリューション推進グループ 調査役 安岡 潮 氏

M&A情報誌「SMART」より、 2015年7月号の記事を基に再構成
まとめ:M&A Online編集部