もう一つ重要なのは諦めないメンタルです。
もちろん大企業でも多くの苦労と困難がありますが、中小企業の社長の心が折れてしまった時の影響は企業の存続問題にすら発展します。例えば10人の企業において社長がプレッシャーに折れてしまった場合、10分の1の人材が抜けてしまうことももちろんですが、前述の通り社長として管轄する業務が多岐にわたるため通常業務にも多くの支障が生じます。中小企業においては日頃からの後継者プランニングがなされていないことも多く、社長が抜けた際のバックアッププランが準備されていないことも一つの理由になっています。
中小企業の後継者育成のために弊社が運営しているネクストプレナー大学を創るきっかけとなったのも以前投資したサーチファンド案件において、重圧に耐えられなかった社長を見たからです。新社長として保育園の経営を引き継いだ後継者がコロナの影響を受けて思ったような経営ができず、また既存の社員の方々との関係性も構築できない中、3カ月後に心が折れて経営が続けられなくなってしまいました。この経験からネクストプレナー大学では折れない強いメンタル作りといざという時に相談できる仲間作りを重視しております。
経営者は意思決定の連続だとよく言われますが、刻一刻と変わる状況の中で会社の大黒柱としての役割を自覚し、覚悟をもって日々の業務にあたることが重要なのだと思います。弊社がネクストプレナーと面談をさせて頂く際にはキャリアの中でどのような修羅場を経験されているのかを伺うように心がけています。キャリアの中で大きな試練を経験し、それを強い覚悟をもって打破してきた経験など、幅広くご経験を伺う中で、客観的に精神的な強さについても勘案しています。
「社長のあるべき像」には複雑性があり、対象企業の業種・業態・成熟度などによって異なります。
しかし、中小企業の経営者となる場合には、きちんと社員の先導ができるリーダーであるかどうかを見ています。よって、今まで有名な大手企業の社長を務められた素晴らしいご経歴の方であったとしても自身の思い描く社長像がアドバイザー(顧問)のような形であれば、中小企業の社長には適していない可能性が高いと考えます。また社長になるということの意味合いを通常の転職と同等に考え、何とかなる、難しければ転職すればいいなど、社長の役割の重さを理解していない方はリスクがあると判断します。
『事業承継のカギを握る「サーチファンド」②サーチファンドの発祥』でご説明したように、アメリカで始まったサーチファンドのモデルは経営経験のないMBA卒業生のキャリアパスの一つでした。また弊社が運営するネクストプレナー大学でも幅広い後継者候補を集めており、中小企業の経営者となる上で過去の経営経験が必須とは考えておりません。しかし、中小企業の社長として担う役割と責任についてしっかりと認識し、全うできる心構えがあることは必要不可欠だと考えます。
文:竹内智洋Growthix Investment代表取締役