シティを語るうえで、抜きにして語れないのが個人向けのリテール業務でしょう。シティバンクは最盛期、首都圏をはじめ全国30を超える店舗網(現在は本店、東新宿、大阪、沖縄の4拠点)を持ち、預金量は4兆円近くに達しました。中堅地方銀行並みの規模を誇っていましたが、超低金利が続く中で収益確保が難しくなり、2014年にリテール業務から撤退し、法人・機関投資家向け業務に経営資源を集中する決断をしました。
シティに口座を持てば、世界各地にあるシティのATM(現金自動預け払い機)で現金を現地通貨で引き出せるサービスが海外出張の多いビジネスマンらに人気を集めました。また、円を売って外貨に換えて預金する外貨預金でもブームを巻き起こしましたことがありました。旧シティのリテール業務は三井住友フィナンシャルグループに営業譲渡され、現在、SMBC信託銀行に引き継がれています。
一方、日本で投資銀行業務を担うシティグループ証券の前身は1999年、当時の日興証券との合弁で設立した日興ソロモン・スミス・バーニー証券です。リーマンショック後の一連のグループ再編の一環として、2009年に現社名に変更し、今日にいたります。
M&A仲介業務でシティは大いに存在感を発揮しています。現時点で、2018年の日本企業による海外M&Aの双璧といえば、武田薬品工業によるアイルランドの製薬大手シャイアーの買収(金額6.8兆円)と富士フイルムホールディングスによる米ゼロックスの買収(6710億円)。シティは、武田の案件では被買収側のシャイアー、富士フイルムの案件では買収側のアドバイザーを務めています。
調査会社トムソン・ロイターがまとめている「日本企業関連M&A市場リーグテーブル」(上位25社)によると、2018年上期(1~6月)のシティの実績は買収金額ベースで9兆287億円(8案件)。三菱UFJモルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス、JPモルガン、エバーコア・パートナーズ、野村証券に次ぐ6位に位置し、2017年(通年)の12位から大きく順位を上げています。
また、米、英国、ロシア、中国、インドなど海外12カ国に「ジャパンデスク」を置き、日本企業を進出先で金融面からサポートする体制を整えています。
文:M&A Online編集部