【シティグループ】知っているようで知らない、外資系金融機関まとめ<10>

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東京・大手町の本社前

外資系金融機関を知るシリーズの第10回は、米シティグループです。世界有数のグローバルバンクとして160を超える国・地域で事業を展開し、約2億の顧客口座を持つといいます。伝統的な商業銀行業務を基本としながら、M&A仲介や株・債券による資金調達などの投資銀行業務でも指折りのプレーヤーとして知られ、ゴールドマン・サックス(米)、JPモルガン(米)などとしのぎを削っています。

日本では現在、法人・機関投資家向けの業務を行っていますが、2014年までは個人向け(リテール)業務を全国の店舗網を通じて展開していました。ひところ、外貨預金で名前を売ったこともあります。「シティ」は日本で最も知られた外資系金融機関といっていいかもしれません。

1902年に横浜に支店を開設

シティは1812年に「シティバンク・オブ・ニューヨーク」としてニューヨークで設立されたのが始まりです。南北戦争後の経済発展などを背景に1890年代までに米国最大の商業銀行に成長を遂げました。

日本とのかかわりは1902年、インターナショナル・バンキング・コーポレーション(1918年にシティが買収)が横浜支店を開設したことにさかのぼり、戦前に東京や神戸、大阪にも支店を構えていました。太平洋戦争中の中断を経て戦後の1946年、シティは日本での活動を再開しました。1973 年には当時のファースト・ナショナル・シティ・コーポレーションが東京証券取引所に上場し、日本とのかかわりが一層強まりました(2016年に東証上場廃止)。

トラベラーズとの合併で「シティグループ」に

本国では、グループの持ち株会社であるファースト・ナショナル・シティ・コーポレーションが「シティコープ」に名前を変え、傘下の銀行名が「シティバンク、エヌ・エイ」となりました。そして1998年に、シティコープが、投資銀行のソロモン・スミス・バーニーなどを擁するトラベラーズ・グループと合併して、現在の「シティグループ」が誕生しました。

日本では曲折を経て現在、「シティグループ証券」(日本法人)と「シティバンク、エヌ・エイ東京支店」を両輪に事業を展開しています。具体的には、コーポレート・バンキング(法人向け銀行業務)、投資銀行業務、マーケッツ&セキュリティーズ・サービス(市場業務)、キャピタル・マーケット・オリジネーション(資本市場業務)、トレジャリー&トレード・ソリューション(資金決済・管理、貿易金融)を中心に据えています。なかでも、コーポレート・バンキングとトレジャリー&トレード・ソリューションの分野は在日の外資系金融機関として最大級の規模を誇るといいます。

シティグループの主な沿革
1812 シティバンク・オブ・ニューヨーク設立
1902 インターナショナル・バンキング・コーポレーション(後にシティバンクが買収)が横浜支店を開設
1973 ファースト・ナショナル・シティ・コーポレーションが東証に上場
1974 持ち株会社のファースト・ナショナル・シティ・コーポレーションが「シティコープ」に社名変更
1976 ファースト・ナショナル・シティ・バンクが「シティバンク、エヌ・エイ」に社名変更
1998 シティコープとトラベラーズ・グループが合併し、「シティグループ」となる
1999 日興ソロモン・スミス・バーニー証券(2003年に日興シティグループ証券)設立
2009 日興シティグループ証券をシティグループ証券に社名変更
2014 シティバンク銀行の個人向け事業を三井住友フィナンシャルグループに売却
2017 シティバンク、エヌ・エイ東京支店(シティバンク銀行から営業譲渡)を開設
日本の拠点を置くビル(都内)

個人業務から撤退の苦渋も

シティを語るうえで、抜きにして語れないのが個人向けのリテール業務でしょう。シティバンクは最盛期、首都圏をはじめ全国30を超える店舗網(現在は本店、東新宿、大阪、沖縄の4拠点)を持ち、預金量は4兆円近くに達しました。中堅地方銀行並みの規模を誇っていましたが、超低金利が続く中で収益確保が難しくなり、2014年にリテール業務から撤退し、法人・機関投資家向け業務に経営資源を集中する決断をしました。

シティに口座を持てば、世界各地にあるシティのATM(現金自動預け払い機)で現金を現地通貨で引き出せるサービスが海外出張の多いビジネスマンらに人気を集めました。また、円を売って外貨に換えて預金する外貨預金でもブームを巻き起こしましたことがありました。旧シティのリテール業務は三井住友フィナンシャルグループに営業譲渡され、現在、SMBC信託銀行に引き継がれています。

一方、日本で投資銀行業務を担うシティグループ証券の前身は1999年、当時の日興証券との合弁で設立した日興ソロモン・スミス・バーニー証券です。リーマンショック後の一連のグループ再編の一環として、2009年に現社名に変更し、今日にいたります。

武田の「シャイアー」案件は被買収側のアドバイザーを担う

M&A仲介業務でシティは大いに存在感を発揮しています。現時点で、2018年の日本企業による海外M&Aの双璧といえば、武田薬品工業によるアイルランドの製薬大手シャイアーの買収(金額6.8兆円)と富士フイルムホールディングスによる米ゼロックスの買収(6710億円)。シティは、武田の案件では被買収側のシャイアー、富士フイルムの案件では買収側のアドバイザーを務めています。

調査会社トムソン・ロイターがまとめている「日本企業関連M&A市場リーグテーブル」(上位25社)によると、2018年上期(1~6月)のシティの実績は買収金額ベースで9兆287億円(8案件)。三菱UFJモルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス、JPモルガン、エバーコア・パートナーズ、野村証券に次ぐ6位に位置し、2017年(通年)の12位から大きく順位を上げています。

また、米、英国、ロシア、中国、インドなど海外12カ国に「ジャパンデスク」を置き、日本企業を進出先で金融面からサポートする体制を整えています。

文:M&A Online編集部