​【法人税】組織再編税制のおはなし(1)継続保有見込要件とは?

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組織再編税制の適格・非適格の判定

では、実務上、どんなケースが論点となるでしょうか。極端な例を出してみます。

■判定の事例

ケース1:
合併法人Bの株主甲は、合併法人Aの株式を取得するが、合併時点では、新株式Aをすべて保有する見込みだった。しかし、その後、突然、お金が必要となり、結果的に新株式Aを第三者に譲渡することとなった。

ケース2:
合併法人Bの株主甲は、合併法人Aの株式を取得するが、合併時点で、新株式Aを外部に売却すべく、仲介業者に売却の依頼をかけていた。しかし、結果的には、新株式Aの売却には至らず、既に何年も継続保有する結果となった。

■判定結果

ケース1の場合は、結果的に継続保有はしていないけれど、少なくとも合併時には継続保有の見込みでした。
ケース2の場合は、結果的に継続保有しているけれど、少なくとも合併時には継続保有はしない見込みでした。
ですから、1は「継続して保有することが見込まれる」に該当し、2は「継続して保有することが見込まれる」には該当しないこととなります。
あくまでも、税制の方針は「見込み」でしか縛りがありません。もちろん、「見込み」は嘘ではいけません。その時点の真実である必要があります。

■判定理由

なぜ「見込み」とせざるを得ないかというと、現状では、未来のことまでは確実な予見技術がないからです。
もしもそのような条件を付すとするならば「タイムマシン」あるいは未来を確実に予測する技術が必要です。

ですから、未上場企業などの適格合併で被合併法人の株主が複数いる場合は、それぞれの株主に継続保有の見込みがあるかどうかの確認をする必要があります。

税制適格に持ち込みたく、かつ、後々、税務調査が入った場合のトラブルを避けるためには「継続保有見込申出書」(定まった形式の文書ではありません)などを作成することをオススメします。真実の継続保有見込の意思を表す文書が存在すれば、国税側は否定できませんからね。(もちろん、虚偽の文書はダメですよ)

なお、上記のケース1のように、あくまでも組織再編時において「継続保有の見込み」が必要なのであって、結果的に環境の変化で継続保有できなった場合でも、「継続保有要件」は満たされます。

逆に、結果的に継続保有していても、組織再編時において、株式上場の主幹事契約を締結していたり、M&Aの仲介業者と仲介契約を締結しているようなケースでは「継続保有見込」は満たさない、あるいは”疑義有り”となるかも知れないのでご注意くださいね。

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