「地方でも中小企業のM&Aを増やし、生産性の向上を図るべき」-冨山和彦IGPIグループ会長は、人手不足や人件費高騰などで深刻な打撃を受けている地方の中小企業が生き残るためにM&Aが必須との見解を示した。しかし、国内M&Aの大半は東京・大阪・名古屋圏に集中している。どうすれば地方で中小企業のM&Aを増やすことができるのか?
そのためには「地方銀行の力が必要」(冨山会長)という。日本記者クラブの会見で、M&A Onlineの質問に答えた。地方においても中小企業M&Aの潜在需要はあるが、仲介業者や投資銀行の手が回らない「供給側の要因」(同)でM&Aがなかなか成立しないのではないかと見ている。
その上で、「地銀は圧倒的な地元企業の情報を持ち、メインバンクであれば相当ガバナンスにも関わっている。さらにはM&Aで必要となる資金需要にも応えられる」(同)と指摘。地銀としても主力業務だった商業銀行ビジネスが頭打ちになっていることから、M&Aを仲介・促進する「地方版の投資銀行、プライベート・エクイティ(PE)銀行としての業務に注力すべきだ」との見解を示した。
冨山会長は会見で「日本経済復興の本丸はグローバル企業ではなく、GDPの7割、雇用の8割を占めるローカルの中堅・中小企業だ」と強調。そのネックとなっているのが、労働生産性の低さだという。人手不足や人件費高騰に伴う倒産を防ぐための補助金政策は「低生産性企業が生き残ることになり、かえって国内の賃金が上がらなくなる」(冨山会長)と、警鐘を鳴らしている。
企業の生産性向上を促すために、「M&Aなどの手法で、企業の新陳代謝を図るべきだ」と主張。M&Aによる生産性の高い企業への「集団転職」(同)で、人件費を引き上げると同時に従業員のリスキリングなどの人的投資を充実し、付加価値労働生産性を向上させることで、日本経済を再び成長軌道にのせることができるとしている。
文:M&A Online
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