一際異彩を放つ『負ののれん』とは何だ?
最近よく耳にする「負ののれん」。会計用語にアレルギーを持つ方に向けて、わかりやすく説明します。
少し古いケースだが、08年の伊勢丹と三越の経営統合において、負ののれんが700億円発生した。
(会社化する場合と、合併の場合では会社の単体財務諸表と連結財務諸表へののれんの発生の仕方は異なるが、ここではその違いは無視し、買収価額と買収先の純資産の差額にフォーカスする)
このケースでは、被買収会社は三越に当たる。形式的には伊勢丹は三越を割安で買ったことになるが、大きく理由は2つだ。
1つ目は、当時三越の銀座店などの土地の時価が高騰した(三越の時価純資産が大きくなる)
2つ目は、三越の時価純資産(土地の含み益)が伊勢丹の買収価格に反映されなかった
ということだ。
要するに、伊勢丹にとっては、
三越の土地の値上がりは無視すべきものということだ。
そして、三越側の株主もそれを受け入れたということだ(相当ごねただろうけど・・・)。
時価ベースの純資産による価値は、ザックリいうと保有する資産それぞれの現時点による売却価格だ。
つまり、買収後、その会社を清算して保有する資産を売却する(で、キャッシュを回収して利回りを得る)ということになる。
対して、百貨店としての機能としての三越を買収し、統合後伊勢丹とのシナジーを期待するということになれば、仮にどんな高値で土地を評価されようが関係ないということになる。この場合は、百貨店としての三越が今後どれだけの儲け(=キャッシュ)を稼ぐのか、つまり三越の将来期待キャッシュフローの現在価値が買収する値打ち、ということになる(インカム・アプローチ:DCF法)。
ということで、本件は、
売却した方が高い会社を敢えて継続させるという事例
ということだ。この点だけだと、何と不合理な!となるかもしれないが(そういう議論をちゃんとして欲しいが)、金銭的価値の評価以外の事情もあろうし、そもそも、その時価とやらで対象となる不動産をすべて売却できるとも限らない・・・相対取引だし交渉事だし・・・
そもそも、
そんな時価ってホントに時価って言える?とも・・・
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