では、果たして業績面での統合効果は上がっているのでしょうか?
明星食品の売上高はここ数年、400億円前後で推移しています。16年3月期の営業利益は13億円。統合直前の06年9月期の売上高が788億円、経常利益が18億円だったことを考えると、物足りない数字と言わざるを得ません。
背景には、食品業界固有のM&Aの難しさがあります。明星食品は1950年の設立。高い麺の製造技術を武器にチャルメラ、中華三昧、一平ちゃんなど、独自性の高い商品を開発。日清を目標に「打倒カップヌードル」を掲げてきました。
しかしその独自性の高さやブランド力ゆえに、日清のグループ入り後も主力商品は維持し、売り場においては引き続き競争関係にありました。コンビニやスーパーなどの量販店では限られた商品の陳列棚にいかに自社商品を置いてもらうかという「棚割り」で各社がしのぎを削っています。コンビニなどの棚における商品が限られている以上、両社の経営が統合されたからといって、簡単に販売量を増やせるわけではありません。
実際、今回、編集部は都内のいくつかのコンビニやスーパーにチャルメラのカップ麺を探しに行きましたが、置いてある店舗は少なく、見つけるのに苦労しました。これに対して、カップヌードルはほとんどの店舗に置いてあり、ブランド力の強さを実感しました。
そもそも、明星食品は自分から望んで日清グループに嫁入りしたわけではありません。投資ファンドの米スティール・パートナーズに敵対的買収を仕掛けられ、ホワイトナイト(白馬の騎士)として登場した日清に救済される形で傘下に入った経緯があります。
日清にとっては明星という長年のライバルを仲間に変え、市場の競争を緩和させるだけでも一定の成果があったといえるでしょう。次のステージとして、一般消費者も統合の効果を実感できるような、両社の技術を融合させた新商品が待望されます。
文:M&A Online編集部
ホワイトナイトって何?と思った方は、こちら
・M&A用語の歴史(2)ホワイトナイト
・M&A用語の歴史(3)敵対的買収