マイケル・ダグラスが主役を務めた1987年公開のアメリカ映画、「ウォール街」をご存知の方も多いだろう。今回は、劇中でテレンス・スタンプが演じるラリー・ワイルドマン卿のモデルになったといわれているジェームズ・ゴールドスミス氏(James Michael "Jimmy" Goldsmith; 1933-1997)を中心に、当時のアメリカの買収実例を紹介したい。

■アメリカの企業買収の実例

 1986年の暮れ近く、乗っ取り屋としてその名をとどろかせていたイギリス人、ジェームズ・ゴールドスミス氏は、オハイオ州アクロンにある世界的な名門タイヤメーカー、グッドイヤー・タイヤ(Goodyear Tire)に一通の手紙を送った。

 乗っ取り屋が名門企業にどんな手紙を送ったのか?

 むろん、それは「脅迫状」である。

 手紙のなかでゴールドスミス氏は、「グッドイヤー・タイヤの株式を買い占めて会社を乗っ取る」と声高に宣言した。

 敵対的TOBによって、株式を買い占めるというのだ。この類の手紙はグリーンメールと呼ばれ、それまで派手な乗っ取り劇とは無縁な世界で平和に過ごしていたグッドイヤーの経営陣を震撼させた。

 ゴールドスミス氏がこのような行動に出たのには十分な理由があった。なぜならグッドイヤーは業績好調で好財務であるにもかかわらず、株式市場での評価はそれに反して低かったのである。

 株式市場とはそういうもので、株価は常に企業価値を正しく反映しているわけではない。かつてのニッポン放送がそうであったように、日本の株式市場にもこのような例は数多くある。