明星食品が日清食品グループとなったのは2006年12月のこと。あれからもうすぐ10年――。
同じカップ麺業界ということで、商品に統合の片鱗を見出せるのでないかと、両社を代表する商品を食べ比べて検証してみました。
■【ラーメン編】カップヌードル VS チャルメラ
日本を代表するカップ麺「カップヌードル」(日清食品)と今年50周年を迎えた「チャルメラ」(明星食品)。
まずは中身をチェック!
蓋を開けた瞬間からして、カップヌードルの具材の華やかさに目が奪われます。
一方のチャルメラは、チャーシュー、ネギ、メンマといった素朴な印象。目に見える具材の統合は、どうやらなさそうです。
お湯を注いで待つこと3分……。
改めて食べ比べてみると、カップヌードルの完成度の高さに驚かされます。チキンやポークのエキスの旨みを感じるスープ、ただの麺だと思っていたらちょっぴり平たい麺、そして彩りを添えるタマゴとエビたち。
ただ、チャルメラも負けてはいません。スープと麺は、はずれのない安定感があります。
とはいえ、残念ながら味の面でも特に共通点を見つけることはできませんでした。
■【焼きそば編】日清焼きそばU.F.O. VS 一平ちゃん夜店の焼そば
日清代表は「日清焼きそばU.F.O.」、明星代表は「一平ちゃん夜店の焼そば」。
まずは具材チェックといきましょう! 焼きそばに欠かせないキャベツはどちらも健在。違いはといえば、U.F.O.に豚肉があることぐらいでしょうか。色数が増える分、見た目的には日清が一歩リードしていると言わざるを得ません。
が、食べる段階となると、その立場は逆転!
ご覧のとおり、一平ちゃんのマヨビームの威力は半端じゃありません。見た目だけでなく、味の面でも個性が際立ちます。
一方のU.F.O.は、可もなく不可もなくの万人に好かれる優等生な焼きそばといった感じです。
結局、ラーメンにも焼きそばにも消費者が実感できるようなM&Aの影響は見出せませんでした。「チャルメラ」も「一平ちゃん夜店の焼そば」もいずれも日清食品傘下に入る以前から、明星食品の柱となる人気商品。そのため、味を変えることなく、独自性が保たれたのでしょう。
編集部の独断と偏見による食べ比べ採点表はこちら。
各項目5点満点でジャッジしてみました。
総合的には、僅差で日清食品に軍配が上がる結果となりました。
では、果たして業績面での統合効果は上がっているのでしょうか?
明星食品の売上高はここ数年、400億円前後で推移しています。16年3月期の営業利益は13億円。統合直前の06年9月期の売上高が788億円、経常利益が18億円だったことを考えると、物足りない数字と言わざるを得ません。
背景には、食品業界固有のM&Aの難しさがあります。明星食品は1950年の設立。高い麺の製造技術を武器にチャルメラ、中華三昧、一平ちゃんなど、独自性の高い商品を開発。日清を目標に「打倒カップヌードル」を掲げてきました。
しかしその独自性の高さやブランド力ゆえに、日清のグループ入り後も主力商品は維持し、売り場においては引き続き競争関係にありました。コンビニやスーパーなどの量販店では限られた商品の陳列棚にいかに自社商品を置いてもらうかという「棚割り」で各社がしのぎを削っています。コンビニなどの棚における商品が限られている以上、両社の経営が統合されたからといって、簡単に販売量を増やせるわけではありません。
実際、今回、編集部は都内のいくつかのコンビニやスーパーにチャルメラのカップ麺を探しに行きましたが、置いてある店舗は少なく、見つけるのに苦労しました。これに対して、カップヌードルはほとんどの店舗に置いてあり、ブランド力の強さを実感しました。
そもそも、明星食品は自分から望んで日清グループに嫁入りしたわけではありません。投資ファンドの米スティール・パートナーズに敵対的買収を仕掛けられ、ホワイトナイト(白馬の騎士)として登場した日清に救済される形で傘下に入った経緯があります。
日清にとっては明星という長年のライバルを仲間に変え、市場の競争を緩和させるだけでも一定の成果があったといえるでしょう。次のステージとして、一般消費者も統合の効果を実感できるような、両社の技術を融合させた新商品が待望されます。
文:M&A Online編集部
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