リーマン・ショックで販売計画が総崩れ!?

 デジタルファクトリーの創業は2009年4月。外資の2Dプリンター業界に身を置く阿井氏にとって、オブジェットの3Dプリンター「EDEN(エデン)」との出合いは衝撃的だった。

「15年ほど前の2000年代初めのこと、その造形物の精巧さを見たとき、鳥肌が立ちましたね。こういう商品を扱い、お客様へのソリューションを展開したいと強く思ったものです」

阿井氏はその頃から3年ほど、3Dプリンター「EDEN」の国内販売の立ち上げに関わり、3Dプリンターの普及に努めた。そうした経緯を経て、創業の計画を立てる。

ところが、創業に向けて動き始めていた2008年に、リーマン・ショックに見舞われた。3Dプリンター市場は将来的に有望視されているものの、まだ進出している国内メーカー・販売店は少なかった。この好機を見逃す手はないと阿井氏は2009年4月に創業したが、2008年末のリーマン・ショックの影響が大きく、予想以上に市場は冷え込んだ。

「創業前に立てていた販売計画は“総崩れ”の状態でした。でも、当時、私は40代の半ば。自分にとっては『いましかない!』と、創業に踏み切りました」

当時、資本金として用意した金額は600万円強。ところが扱う3Dプリンターは、1台数千万円以上はする商品ばかりだ。

「計算上は1台も仕入られないですよね。でも、起業しました。これまで協力関係にあった販売会社さんに支払期間を融通していただいたり、役員の親族に保証人になっていただいたり。いまでは笑い話ですが、創業年12月の当社預金残高が、10万円ほどになりまして……、それでも3Dプリンターの衝撃的な出合いをビジネスとして広めていきたいという気持ちは変わりませんでした」

社会的な意義が高く、革新性のある商品・サービスを広くビジネスとして展開していこうとする姿勢。それは、今日のスタートアップの原点ということもできる。