東インド会社が解決した社会課題とは…

創業初期の東インド会社が取り扱ったメインプロダクトは「香辛料」である。ヨーロッパの気候は今も昔も厳しい。特に冬季は過酷だ。冬には塩漬けで保存した半分腐ったような肉しか食べることができなかったという。そこに、はるばる東インドから香辛料がもたらされた。これは保存と味覚に優れた「金より価値のある粉」だったのだ。

ビジネスモデルは「中間マージンを排除する破壊的流通革命」

次に東インド会社のビジネスモデルについてみてみよう。東インド会社のビジネスモデルは「中間マージンの排除による流通革命と独占利益の獲得」である。それまで複雑な陸路と海路を経て東アジアからヨーロッパに運ばれていた香辛料は、末端価格が非常に高かった。ヨーロッパに到着する前に通過する国や港による関税や中間流通業者へのマージン、港湾利用料などが高値の原因である。

このような中間コストやマージンを排除し、香辛料をダイレクトにヨーロッパに運ぶことで、低価格化が実現できる。さらに、この流通ルートを独占することで、競争を排除して独占利益を得ることができる。これを実現したのが東インド会社である。

現代においてはIT革命の始まりとともにネット通販のアマゾンが台頭し、既存の流通を破壊し尽くしつつある。16世紀に、これと本質的には同じことが東インド会社によって、はるかにドラスティックになされたのだ。

東インド会社のビジネスモデルを実現したテクノロジー

いつの時代も優れたプロダクトやビジネスモデルがあっても、それだけで大きな価値をもたらすことはできない。優れたプロダクトやビジネスモデルが、優れたテクノロジーとがっちり結びついた時に、初めて大きな価値が生まれる。これは現代のAIベンチャーも、16世紀の東インド会社でも同様だ。

では、東インド会社はどのようなテクノロジーで世界を制したのか。それは以下の3つの技術である。

「造船技術」
欧州で戦争を繰り広げていたスペイン、ポルトガル、オランダ、そしてイギリスは死活的に重要な技術として造船技術(軍艦)を発達させた。そして、航続距離と艦載能力を飛躍的に発展させた。長期の航海に耐える能力を獲得したのである。

「航海技術」
造船技術が発達したといっても蒸気機関が発明される200年も前であり、すべての船は帆船だった。この帆船を操ってモンスーン風や偏西風を巧みに利用し、はるか東インドまで到達する必要があった。そのために多くの犠牲を払いながら、航海技術やそれを支える発明(地図、コンパスなど)が洗練されていった。

「軍事技術」
欧州で戦争を繰り広げていた上記の4か国は、結果的に世界最高の軍事技術を得る。そして、その武器を艦船に搭載することにも成功し、この軍艦がほぼそのまま東インドの航海に活用された。

こうして東インド会社は既存流通の破壊だけでなく、鉛の玉とお金という2つの「弾丸」により世界の植民地化を推進した。そして有史以来最大のプラットフォーマーとなり、同時に最強のディスラプターとなった。この圧倒的独占利益の蓄積は200年以上も続き、次の「地殻変動」となる産業革命の原資となるのだ。