高額な買収金額でも収益化に自信あり

 クックパッドのM&Aの実績を見ていくと、買収先の傾向としては二つのパターンがある。一つ目は、既存事業の海外展開である。アメリカのレシピ・サービスの買収を皮切りに、英語圏、スペイン語圏、インドネシア語圏、アラビア語圏のレシピ・サービスを次々と買収している。二つ目は、主婦層向けのサービス事業者の買収であり、主婦層向け商品のECサイト、知育アプリ開発会社などを買収している。前者は、将来への投資という側面がより強いように見受けられ、後者は、既存サービスのメインターゲット層へのサービスラインアップの強化である。

 買収の特徴は、売り上げが伸び悩んでいる企業に対しての高額な買収資金投下である。海外レシピ・サイトの多くが収益化に苦しんでいる中で、こうした動きは一見無謀にも見える。だが、クックパッドは自社の実績から収益化が可能と判断し、たとえ高額であったとしても買収に踏み切っている。総資産に占めるのれんの割合は2015年6月期末時点では24%であり、14年12月期末の15%からは大幅に増加している。バランスシートからも、同社が積極的な攻めに転じていることが見て取れる。

 また、ほかの事業についても、対象会社が持っている会員ネットワークに自社のノウハウを加えることにより、成長にドライブを掛けることができると判断し、投資を行っている印象がある。

 例えば、13年10月に買収しているコーチ・ユナイテッドは、語学・楽器・デザインなどのプライベート・レッスンを提供するサイトを運営している。同社のサービスは、中流クラス以上の個人をターゲットにしており、クックパッドに比べて個人へのリーチが深く、有料サービス利用度の高い顧客を抱えている点に強みがある。クックパッドは、ターゲット層が広いもののリレーションが浅くなりがちとなるため、コーチ・ユナイテッドの個人へのリーチの深さと有料サービス利用度の高さを生かして、今後、インターネット化が加速すると推測されるハウスキーピングなど、各種地域サービスへの横展開を目指しているのではないかと考えられる。

 こうした個人へのリーチを意識する傾向は、近年のM&Aマーケット全体においてトレンドとなっており、各種プラットフォーム事業への投資が活発化している。クックパッドは、基本利用料無料というフリーミアム・モデル(基本的なサービス料を無料で提供するビジネスモデル)により個人顧客を取り込む典型例だが、個人顧客の数を増やすには限界がある。今後はいかに課金層を増やし、その課金層へのサービスラインアップを充実させるかが一つの大きな経営課題になると考えられる。その点、コーチ・ユナイテッドの買収は、課金層の増加とラインアップの強化という両面性を持ったM&Aであり、横展開を行っていく上で重要な位置付けにあると思われる。