6階建てのビルを壊れるまで震動させる―そんな装置が兵庫県三木市にある。その名はE-ディフェンス。国立研究開発法人防災科学技術研究所が運営する大型構造物の震動破壊実験施設で、2005年に完成した。面積約5,200平方メートル(実験棟)、高さ43メートルは世界最大だ。
実験設備の最大速度は水平方向が秒速200センチメートル、鉛直方向が秒速70センチメートル。秒速200センチメールは、あっという間に巨大な建物が2メートル横に移動することを意味する。建物内にいるとどれほどの衝撃があるのか。本棚やテレビ、冷蔵庫、家具などが飛び散る映像は想像するだけでも身の毛がよだつ。
このとんでもない施設で実物大の構造物を壊れるまで震動させて、その過程を科学的に分析し壊れない構造物を設計できるようにするのが実験の狙いだ。秒速2メートルのスピード揺すれば、どんな強固な建物でも壊れてしまいそうだが、この過酷な条件下でも、いずれは壊れない建物が作れるようになるのだろう。
E-ディフェンスでは強い揺れへの対応ばかりではない。東日本大震災時には遠く離れた地域の高層ビルがゆっくりと揺れる長周期震動が観測された。こうした地震にも対策が講じられるように2013年には長周期震動の再現を行えるよう改修された。
施設は兵庫県立三木総合防災公園内ある。緑の多い広々した公園で、同じ敷地内には日本最大規模のドーム型テニスコート・ビーンズドームがあり、テニスプレーヤーの錦織圭選手もここで試合を行ったことがある。同ドームでは東日本大震災時に救援物資の集積・仕分作業の拠点として活躍した実績もある。
◇E-ディフェンス=兵庫県三木市志染町三津田西亀屋1501-21、神戸電鉄押部谷駅からタクシーで約10分。神戸市営地下鉄西神中央駅からはタクシーで約25分。神戸電鉄緑が丘駅からは路線バスで約20分。やや足の便は悪いが、公園での散策を兼ねて出かけてみてもよさそうだ。