今回は、「自分の頭で考える」にあたり、有益なテクニックについてお話ししましょう。
それは、ずばり「いきなり中身について考えない」ことです。
少し哲学的に表現すれば、中身(コンテンツ)ではなく、その考える対象の存在それ自体をまず問うてみることです。
居酒屋などで、「俺はあんなに売り上げているのに、これだけしか給料をもらっていない」とこぼす営業パーソンの姿を見かけたことはないでしょうか。
実は営業担当者は会社から見ればコストの塊です。自分のコストを検証してみましょう。
複雑な問題を考える際、有益なテクニックとは、「いきなり中身について考えない」ことです。
中身(コンテンツ)ではなく、その考える対象の存在それ自体をまず問うてみるのです。
例えば、年功制を敷いている会社が、「成果主義賃金」を導入しようとしているとします。
人事担当者は、他社事例やビジネス書から、成果主義のコンテンツの中で、自社に採り入れるべきいいアイデアは無いか探そうとするでしょう。
しかし、このようにいきなりコンテンツから入ってしまうと、かえって混乱してしまいます。
まずは、成果主義とは何か、それを導入することにどういう意味があるのかという、制度の存在そのものを問うてみることが必要なのです。
中身ではなく、形や体系を考えることが肝要なのです。
中身ではなく存在そのものを問うてみることの最大の利点は、より冷めた眼でその事象を相対化し、考えてみることができるということです。
成果主義導入の事例で言うと、まず成果主義という事象を客体化し、その必要 性を議論することができます。
あるいは、「成果主義というシステムを誤解していた」などの新たな発見があるかも知れません。
今、皆さん自身が取り組んでいる課題を振り返ってみると、それらはすべて、本当に必要なことばかりでしょうか?
存在そのものを問うてみることなく、やみくもに取り組んでいることが、あるのではないでしょうか?
新しいアイデアを出そうと思うのであれば、前へ突き進もうとするだけでなく、少し立ち止まり、やろうとしていることの「存在そのもの」を問うてみる癖をつけましょう。
逆説的ですが、立ち止まることこそが真の前進へ繋がるのです。
常識とは違う発想をしようと思えば、「視野」を拡げて考える必要があります。
今回は、視野を広げるために有用で、すぐに実践可能な思考訓練を紹介します。
ポイント
最近、大学で学生を教えていて感じるのは、物事を捉える視野や関心が本当に狭く、自分と直接関係がある身近なことに対してしか興味を示さないということです。
例えば、「何でもいいから、自分の関心の持っていることを挙げてみなさい」と指示すると、大半の学生は、自分が今取り組んでいるアルバイトや部活動などを題材として取り上げようとします。
最近の若い学生は、自分に直接関係していないような広く大きな問題は、考えようとしない傾向にあるのです。
そもそも自分とは違う世界だと思っているか、考えてもどうせわからないと高をくくっているかです。
また、経理はお客さまが「いつ入金をしてくれるか?」ということを非常に気にしていますが、営業担当者としては、お客さまが気を悪くするのではと、なかなか聞けません。
しかし、会社は銀行などからお金を借り入れて事業をしています。もし、入金が遅くなると、入金処理が遅れ、資金繰りが悪くなり、余計な金利を支払うなど、会社は損失を被ります。
営業担当の方なら一度や二度ぐらい必ずこんな事があると思います。こんな場合、上司だけでなく、経理担当者に小言を言われることになります。
理由は、経理で面倒な事務作業が増えるからです。
ですので、入金を出来るだけ早くしてくれる営業担当者は、経理・財務にとってすごく頼もしいとともに、社内の評価も上がります。
同じように、在庫担当者の場合、過剰に余っている商品を、高く売ってくれる営業担当者は非常に頼もしいです。
別の角度から見ると、最近の学生は、自分自身のことや自分の思いを述べることは、恥ずかしがらずに出来るのですが、自分以外のこと(他者、社会)を対象にした問いには急に寡黙になってしまう傾向がある、とも言えます。
社会的な話題を出そうとすると、急に冷めてしまい、コミュニケーションを遮断しようとしてしまう態度は残念至極です。
こうした学生に対し、私はいつも「(あなたではない)他人は、なぜそういった行動をとったと思いますか?」と尋ねるようにしています。
このような問いには最初は全然答えられないのですが、繰り返ししつこく問いかけていくことを通じ、次第に考えようとする態度を身につけてくれる学生が多いようです。
数ヶ月もこの訓練を続けると、少なくとも「すぐにあきらめては駄目だ」ということは理解し、考えようとするようになっていきます。
要は、こうした"自己中心的"な世界観の若者には、自分だけの世界から、他者も含めた自分の世界へと脱皮させてやらないといけないということです。
そのためには、自分がどう思うかだけではなく、極力、自分以外の他者が、なぜそういう行動をとったのか(あるいは、なぜそうなっているのか)を問うてやることです。
こうした訓練を粘り強く続けていくことで、ビジネスの世界に入ってからも広い視野から物事を考えられるようになるはずです。
株式会社インソース より
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