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第12回 高校生主体の地方創生イベントを未来へつなぐ——「18っ祭!」イベントレポート

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スケールアップして第2回が開幕——甲子園のような恒例イベントを目指して

「18っ祭!」は、高校生が中心となり、企画から運営までを担当するイベントです。今回のテーマは「しこちゅ〜スーパー文化祭〜りんく〜」。テーマカラーであるラベンダー色の「18っ祭!」Tシャツを着た市内の高校生らがボランティアスタッフとして参加しました。四国中央市役所周辺で開催された前回から規模を拡大し、今回は市の文化ホール・しこちゅ〜ホールが会場です。

午前10時15分、「2回目を迎えた「18っ祭!」を高校生が存分に楽しんでほしい。市役所も全面的に支援しますので、甲子園のような恒例イベントに育てていただければ幸いです」との市長のスピーチに続けて、高校生代表3名の開会宣言で幕を開けました。企画チームとしてイベントを成功させるために頑張った点や、シティプロモーションとして四国中央市を盛り上げるにはどうすればいいかを考えたことなど、楽しみながら今日を迎えたことが伝わる内容でした。

開会式典は、高校生が1人ずつ四国中央市民としての声を発表し、未来に対するイメージを一言ずつ書いた付箋をボイスウォールに貼り付ける演出で締めくくられました。

 高校生ら市民とプロミュージシャンとのコラボレーション演奏

2F大ホールで行われたステージイベントでは、「18っ祭!」のメイキング映像が流れた後、吹奏楽演奏「市民吹奏楽団×高校生×未来の高校生×nabeLTD」がスタート。ピアノ担当のnabeLTD氏が作曲した楽曲を、四国中央市の未来を担う高校生や中学生、地元の吹奏楽団がコラボレーションした演奏で、会場は熱気に包まれました。

演奏終了後、nabeLTD氏に今回の感想を伺いました。

nabeLTDさん(TwitterInstagram

ピアニスト・プロデューサー・コンポーザー・アレンジャー

幼少期からピアノに熱中し、ジャズに傾倒。バークリー音楽大学を卒業後、ニューヨークを拠点に活動する。帰国後は、鍵盤奏者としてアーティストへの楽曲提供やサポートミュージシャンなど、多彩な演奏活動を続けている。

——ミュージシャンとして活躍されているnabeLTDさんは、昨年の初回「18っ祭!」にイラストレーターの鷲尾友公氏が制作した「VisionMap」とコラボして四国中央市の「音」を紡ぎ合わせたオリジナル音源を制作されました。今回、2回目の「18っ祭!」で、オリジナル音源を使い市民の方々とコラボレーション演奏してみていかがでしたか。

nabeLTD:四国中央市の方たちをもっと巻き込んでいきたいという思いがあって、今回は高校生や中学生、市民吹奏楽団とライブ演奏を行いました。オリジナル音源にプラスしてライブ演奏するスタイルで、ようやく第一ステップを踏み出せたかなと思っています。

——本番までの練習はいかがでしたか。

nabeLTD:本当は東京から四国中央市を何度か訪れて、皆さんと練習をしたかったのですが、リモートによる練習のみとなりました。実際に顔を合わせて練習できたのは昨日のリハーサルが初めてです。皆さん本番までの追い上げが素晴らしくて、練習以上の演奏になって驚きました。

——高校生や中学生に対する印象はいかがですか。

nabeLTD:事前に中高生に即興演奏用の譜面を渡していたのですが、特に中学生3人は自由に演奏することにハードルを感じたようで、リハーサルでは上手くいきませんでした。そこで、一旦譜面は忘れて自由に演奏してみる楽しさを伝えると、本番ではその場のフィーリングで楽しみながらアドリブ演奏ができていたので素晴らしかったです。中高生にとって、即興のような演奏は馴染みがないと思いますが、これをきっかけにもっと自由に音楽を楽しんで遊んでいく部分を理解してもらえたら嬉しいです。

                                      

大ホールでは、ダンスや演劇、バトンなど、地元の高校生やダンスグループによるパフォーマンスが続きました。午後、最後のイベント「結∞人ビデオメッセージ」は、地元とゆかりの深い社会人やYoutuber、アーティストなどが次々と高校生に向けて熱く語る映像をまとめたコンテンツでした。ビデオコメントではサプライズ登場の方もいて、会場の高校生から歓声が上がっていました。

会場入口を見守る龍のオブジェの迫力

高橋連矢さん(左)、加藤実愛さん(右)

篠永:企画については、学校生活や日常生活で見聞きしたイベントを「18っ祭!」でも挑戦してみたい、というリクエストがありました。市内でも見かける事例を参考に提案してくれるので、実現可能なものが多かったです。

会場入口に飾られた巨大な龍のオブジェを作った高校3年生2人に話を聞きました。

——オブジェを作った経緯を教えてください。

加藤:広い会場のシンボルとして記念になるオブジェを制作したいというアイデアを市役所の方に相談したところ、資材集めなどバックアップを受けながら1カ月がかりで完成しました。方向性に迷うこともありましたが「遠慮したりせずとことんやってほしい」と言ってもらえたので全力でやり切りました。

高橋:サイズが大きく、腕の部分の設置は当日になりましたが、2人で毎日細かく調整を繰り返し、無事完成させることができました。

——お2人は昨年も参加されていますね。昨年と比べてどう感じていますか。

加藤:昨年は外(マルシェ)と中(建物内展示)が分かれている印象でしたが、今年は自然に建物内に入っていく導線ができていて、一体感があっていいと思います。僕たちが作ったオブジェだけでなく、後輩たちが作ったホールの内部の装飾をいろんな人に見てもらえるのが嬉しいですね。

——来年の18っ祭を運営する後輩たちに伝えたいことはありますか。

高橋:やりたい企画のアイデアはいっぱいあったのですが、着手が遅かったせいで時間がなく断念した企画が多かったのが反省点です。市役所の職員やマルシェのお店の方など多くの方々との調整が必要なので、とにかく早めに準備を始めてほしいと思います。

体験コーナーや企業展示も人気

今回の「18っ祭!」では、「水引体験」や「親子で塗り絵」など体験コーナーも設けられました。1F和室の四国中央市の伝統産業・水引体験は、伝統工芸士の指導を受けながら、参加者は1本1本の水引を手に取り水引細工に仕上げていました。また、美術や書道など高校生の美術作品の展示もありました。

今回からスタンプラリーやInstagramのおすすめフォトスポットの設定など、来場者を会場内で回遊させる試みが採用されていたことが印象的でした。

高校生とのコラボメニューも人気で賑わうマルシェ会場

会場には、四国中央市の飲食店を中心に23店舗のショップや屋台・キッチンカーによるマルシェが開催。フードやドリンク、アクセサリー、雑貨など各店舗の名物メニューや商品を目当てに多くの市民で賑わいました。特に、今年は高校生が店舗とのコラボメニューに挑戦。特産のサトイモを使ったカラフルなスイーツが目をひきました。

ステージパフォーマンスや体験コーナー、マルシェを通じ「人と繋がる」「未来を感じる」「地域を感じる」イベントとして盛大に開催された2回目の「18っ祭!」。昨年は来場者だった高校生が今年はボランティアスタッフとして企画から参加するなど、確実にバトンが渡り、未来へと繋がり始めていることが感じられる1日となりました。イベント継続に向けた基礎固めをしながら、さらにステップアップして来年度のネクストステージへと続くことが期待されます。

ぬりえコーナーでは子供たちが四国中央市のVisionMapに思い思いの色を塗り重ねた(左)、水引体験コーナーは大盛況(右)
美術展示コーナーでは絵画や書道など学生による様々なアート作品が展示されていた(左)、屋外のマルシェでは多数のキッチンカーが並んだ(右)

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