米Uberは2019年4月1日(米現地時間)、自社が展開する自動車配車サービスで「個人ドライバーの登録を中止する」と発表した。すでに同社サイトのドライバー登録画面は削除されている。今後はタクシーを中心に配車サービスを提供する方針だ。Uberは個人ドライバーの登録中止について、「すでに全世界で十分な人数のドライバーを確保しており、過当競争になる前に新規登録を中止した。今後の登録再開については未定だ」とコメントした。
証券アナリストの多くは「Uberは段階的に個人ドライバーを削減し、タクシーの配車プラットフォームを目指すのではないか」と予想している。米国や欧州、日本ではタクシー会社が配車業務をUberに委託する動きが加速している。東京都内の大手タクシー会社幹部は「配車をUberへ一本化することで、自社の配車サービススタッフを削減できた。業務連絡もスマホアプリですべて対応できるためタクシー無線も不要になり、大幅なコストダウンにつながっている」と喜ぶ。
運賃が高いため手数料が稼げるタクシー配車のシェアが伸びたことで、Uberにとって運賃の安い個人ドライバーは「手数料収入を稼げないお荷物」となりつつある。さらにタクシーに特化することで利用客とのトラブル処理をUberから切り離せるほか、交通事故リスクが減るなどのメリットもあるという。
すでにSNS上ではUberの個人ドライバーから「心当たりのないクレームを持ち出されて、一方的に登録を解除された」との不満が上がっており、米国では集団訴訟の動きも出ている。こうした不満は主に先進国都市部の個人ドライバーに多く、新興国や先進国でも過疎地のドライバーからの指摘は少ない。タクシーが不足しているエリアでは、Uberも個人ドライバーを引き続き活用していくようだ。
だが、タクシードライバーも安穏とはしていられない。Uberは事故で一時中止していた自動運転車の実証実験を再開しており、いずれは自動運転車の配車へシフトするのは確実だ。すでにUberは米国の一部タクシー会社に、自社製の自動運転システムを搭載した車両を売り込んでいる。
これが実現すればタクシー会社が自動運転車を購入し、Uberが自動運転システムの販売とメンテンナンスおよび配車サービスを供給するビジネスモデルが確立する。タクシードライバーで組織する労働組合幹部は「Uberの自動運転車が導入されれば、タクシードライバーは不要になる。Uberの個人ドライバー排除は決して他人事ではない」と危機感を強めている。