「不適切な会計・経理を開示した上場企業」調査

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※本調査は、自社開示、金融庁、東京証券取引所などの公表資料を基に「不適切な会計・経理」で過年度決算に影響が出た、あるいは今後影響の可能性があることを開示した上場企業、有価証券報告書提出企業を対象に集計した。

※業種分類は、証券コード協議会の業種分類に基づく。

年度別推移、2015年度は期中で過去最多を突破

 2007年度以降の「不適切な会計・経理」を開示した企業数は、2013年度から漸増傾向をたどっている。2015年度は2016年2月9日までに43件に達し、年度末まで約2カ月を残し調査開始以来、最多記録を更新した。

内容別、「粉飾」が最多の18件

 不適切な会計の内容(動機)は、利益水増しや費用支払いの先送り、代理店への押込み販売や損失隠しなど、業績や営業ノルマ達成のための「粉飾」が18件(構成比41.9%)で最多だった。

 次いで、経理ミスなどの「誤り」が12件(同27.9%)、会社資金の「着服」が10件(同23.3%)と続く。子会社が当事者のケースでは、親会社向 けに業績や予算達成を偽装した不適切会計が多く見られた。また、役員らが関与した「役員への不正な利益供与」や、「元従業員による不正行為による会社資金 の着服横領」など、コンプライアンス意識の欠落した事例など不適切会計は多様化している。

発生当事者別、「子会社・関係会社」が20件でトップ

 発生当事者別は、「子会社・関係会社」が20件(構成比46.5%)で最多だった。子会社幹部による売上原価過小計上や、在庫操作さらに支払い費用の先 送りなど、いわゆる粉飾目的の不正経理のほか、子会社従業員による架空取引を装った着服横領もあった。目が行き届きにくい子会社・関係会社でのコンプライ アンスが徹底していないケースが目立つ。

「会社」は、会計士から経理処理のミスを指摘されたものが大半を占め、また「従業員」では、着服横領のほか、代理店に対する押込み販売など、営業成績のプレッシャーに圧されて架空取引に手を染めるなど、過度の成績至上主義が動機となったケースも多い。

産業別、製造業が18件に大幅増加

 産業別の最多は製造業の18件(構成比41.8%)だった。インフラや半導体事業で利益の水増しを行っていた(株)東芝(TSR企業コー ド:350323097、法人番号:2010401044997)のほか、代理店に対する押込み販売による売上高の過大計上を行った曙ブレーキ工業(株) (TSR企業コード:290001102、法人番号:8010001034724)など、自社の利益を優先するための不正経理が行われていた。

市場別推移、東証1部が20件でトップ

 2013年度までは業歴が浅く財務基盤が比較的弱い東証マザーズ、ジャスダックなどの新興市場が目立ったが、2015年度は国内外に子会社や関連会社を 多く抱える東証1部・2部の大手企業に不適切会計が集中した。大手企業の子会社で従業員による着服横領や、業績達成のため不正会計を行うケースが目立っ た。

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